【東京農工大 井手先生】ネコSAA 応用事例の紹介

血清アミロイドA(SAA)は、炎症性サイトカインの刺激によって肝臓で作られて血液中に放出されることから、(イヌにおけるCRPなどと同様に)正の急性相蛋白の一つとして、特にネコで臨床応用されています。もともとは全身性アミロイドーシスで沈着するアミロイド線維の前駆物質です。イヌのCRP同様、非特異的な炎症マーカーであり、もし高い数値が出た場合は、炎症や腫瘍性疾患といった“大きな”病気の存在を示唆するため、その原因を探す必要があります。一方、炎症などが存在しても上がらない場合もあるため、参考基準値内であったとしても、炎症性疾患を除外して良いわけではありません。

猫伝染性腹膜炎(FIP)について

FIPは、かねてから診断が難しい代表的な疾患です。昔のように血中の抗体検査など感度や特異性が低い検査手段しかなかった時代に比べれば、病態の理解も進み、遺伝子検査が使えるようになるなど、獣医学の進歩による恩恵はあります。しかし早期に簡単に使えるマーカーがあるわけではなく、症例がよほど典型的な特徴を示さない限り、今でも診断に時間がかかることは少なくありません。その一例を【症例1】として紹介します。

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