ネコ甲状腺機能亢進症(FHT)は、高齢ネコでも一般的な内分泌疾患のひとつです。
治療をせず放置すると、さまざまな合併症により生命を脅かすこともあります。
FHTの治療は、放射性ヨウ素、ヨウ素制限食、甲状腺摘出術、メチマゾール投与が挙げられます。
日本ではメチマゾール投与による治療が一般的で、甲状腺摘出術が選択されるケースは少数です。
今回は、日本のプライマリケア病院での甲状腺摘出術と、メチマゾール投与による治療の生存期間を比較した論文を紹介し、甲状腺摘出術という選択肢に注目してみましょう。
研究の概要
ある日本のプライマリケア病院を受診した新規発症の甲状腺機能亢進症41例を、後ろ向きコホートデザインで解析しました。
治療群は甲状腺摘出術15例、メチマゾール単独治療26例でした。
この研究の目的は、生存期間を比較することです。
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結果
1.生存率
甲状腺摘出群は生存期間中央値(MST)が1,893日、メチマゾール群は730日であり、甲状腺摘出群の生存期間が有意に長い結果となりました。
2.再発率
甲状腺摘出群では2匹のネコがそれぞれ955日目と1,160日目に再発。
1年、2年、3年の無再発率はそれぞれ100%、100%、93%でした。
メチマゾール群では7匹のネコが再発し、再発までの平均期間は641日でした。
1年、2年、3年の無再発率は、それぞれ96%、85%、77%。
したがって、甲状腺摘出群のほうが、メチマゾール群よりも再発率が有意に低い結果となりました。
3.費用
甲状腺摘出とメチマゾールの1年間の費用には、有意差はありませんでした。
4.死因
甲状腺摘出群は研究期間終了時に12匹のネコが死亡しており、もっとも多い死因はCKDでした(n=7、58%)。
メチマゾール群は研究期間終了時に19匹のネコが死亡し、もっとも多い死因は心不全でした(n=7、37%)。
このうち、3匹が肥大型心筋症(HCM)を患っていました。
考察
甲状腺摘出群は生存期間も長く、老齢ネコではもっとも一般的な死因のCKDで亡くなっていました。甲状腺機能亢進症の合併症もなく、根治的な治療がされたと評価できます。
メチマゾール群は再発が多く、コントロールのためにメチマゾールを漸増するも副作用等で十分な治療ができず、合併症の心臓疾患で亡くなったネコが多いと推察されます。費用面では両治療群での差異はないので、手術を回避すべき疾患がなければ、甲状腺摘出手術にメリットが多くなるでしょう。
まとめ
メチマゾール治療の副作用や再発にくらべ、甲状腺摘出術は再発を防ぎ合併症を回避する根治的な治療であり、生存期間の延長も期待できることがわかりました。
甲状腺摘出術は術後の低カルシウム血症や反回神経麻痺などのリスクはありますが、多くの利点が得られ、今回の研究が、甲状腺摘出術普及への一歩になることが期待されています。
獣医師D
【参考文献】
Comparison of survival times of cats with hyperthyroidism treated with thyroidectomy or methimazole at a primary care hospital in Japan
JAVMA | NOVEMBER 2024 | VOL 262 | NO. 11
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