高齢ネコはさまざまな原因で高血圧になります。
なかでも眼に障害が生じやすいですが、早期発見は難しく、気づいたときには重症化し、失明に至ることもあります。
そこで本記事では、眼底検査を用いて、高血圧性眼疾患を早期に診断するためのポイントを紹介します。
眼底検査の方法
検査は、暗室で行われます。
散瞳(瞳孔を散大させること)することで、詳細な眼底検査を行うことができ、1%トロピカミドを1滴点眼後、約15~20分で散瞳が得られます。
1.直像検眼鏡
直像検眼鏡による検査では正立像が得られますが、視野は狭くなります。
高血圧病変の定期的なスクリーニングには適していません。
眼底の特定の領域をより詳細に検査するのに役立ちます。
2.倒像検眼鏡
倒像検眼鏡は視野が広いため、詳細な眼底検査を行うには効率的な方法です。
しかし、倒立像となるため、判読には熟練を要します。
眼底検査からみる眼病変の変化
血圧が160~180 mmHgに上昇すると、網膜の小さな血管に変化が起こります。
1.網膜細動脈の変化
ヒトでは、網膜細動脈の狭細化が最初期に起こります。
ネコの場合、網膜細動脈径について明確に記載した文献は見当たりませんでしたが、網膜血管の蛇行が見られることがあります。
2.高血圧性網膜症
最も代表的な所見は網膜出血であり、眼底検査で容易に検出可能です。
出血は、網膜内における発生部位(深さ)によって異なる外観を示します。
・網膜前出血:網膜の表面に位置するため出血が大きく広がる傾向があり、その下層にある網膜血管などの眼底構造を覆い隠す(遮蔽する)ように観察されます。
・表層網膜内出血:表在毛細血管の破裂によって発生し、「火炎状」と表現されます。
・深部網膜内出血:深部網膜層に限局して出血することにより、小さく丸い外観になります。
・膜下出血:網膜と脈絡膜の間に位置し、暗く、上に覆われている網膜血管が見えます。
・網膜細動脈瘤:網膜動脈の虚血性損傷の結果である可能性があります。
網膜出血以外にも、網膜浮腫、軽度の漿液性網膜剥離などが起こります。
3.高血圧性脈絡膜症
最も影響を受けやすい血管床は網膜ではなく、脈絡膜です。
脈絡毛細血管に起因する網膜下液の蓄積が一般的な特徴です。
網膜下液は網膜組織に波及して網膜浮腫を起こすことがあります。
局所的な浮腫の拡大は進行し、漿液性網膜剥離や、しばしば水泡性網膜剥離を引き起こすことがあります。
4.高血圧性視神経症
視神経の病変には視神経乳頭浮腫(→境界不明瞭、軽度の隆起)や萎縮があります。
これらは観察が困難ですが、十分な散瞳により観察が可能になります。
まとめ
早期に眼底病変を検出する最も効果的な方法は、血圧測定を必要とするすべてのネコの眼底を検査することです。
定期的な血圧モニタリングは、7歳を超える健康なネコでは、少なくとも年に1回、11歳以上の健康なネコでは、6~12か月に1回実施することが推奨されています。
慢性腎臓病(CKD)など、全身性高血圧の危険因子を持つすべてのネコは、さらに頻繁に血圧を測定し、眼底検査をすることで早期発見につなげることができるでしょう。
獣医師F
【参考文献】
・HYPERTENSIVE OCULAR DISEASE IN CATS
A guide to fundic lesions to facilitate early diagnosis,
Journal of Feline Medicine and Surgery(2019)21,35-45
・Hypertension and importance of ocular examination in cats, Vet Times, June 26, 2017
・Canine & Feline Hypertensive Retinopathy FAQs
University of Tennessee Ophthalmology(Hypertensive Retinopathy FAQ, 2024)
・日本人間ドッグ・予防医療学会 眼底健診判定マニュアル
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