SFTS(重症熱性血小板減少症候群)は国内で届出症例数が増加しています。
これまで発生が少なかった地域からも患者が報告されるようになり、感染地域の拡大が注目されています。
今回は、最新の発生状況やマダニのSFTSウイルス保有状況、新たな治療薬として承認された「ファビピラビル」について解説します。
SFTSの発生状況
国立健康危機管理研究機構(JIHS)の統計によると、国内のSFTS届出症例数は増加傾向にあります。
2023年は134例、2024年は121例でしたが、2025年は192例が届け出られ、過去最多となりました。
また、従来は西日本を中心に患者が報告されていましたが、2025年には関東や北海道でも患者が報告され、全国的な感染リスクを考える必要が出てきています。
特に獣医療関係者が注意したいのが、SFTSに感染した動物からのヒトへの感染です。
2025年には三重県で、後にSFTSと診断されたネコを診察した獣医師がSFTSを発症し、亡くなった事例が報告されています。
ワンヘルスを担う立場である獣医師や愛玩動物看護師は、マダニだけでなく、感染が疑われるイヌやネコの血液、唾液などとの接触にも十分な注意が必要です。
マダニのSFTSウイルス保有率
国立健康危機管理研究機構(JIHS)によると、国内のマダニを対象にした調査では、フタトゲチマダニ、キチマダニ、タカサゴキララマダニなどの複数の種類からSFTSウイルス遺伝子が検出されています。
過去の国内分布調査では、マダニにおけるSFTSウイルス遺伝子の保有率は5~15%と報告されました。
SFTSウイルス遺伝子を持つマダニはすでに感染が発生している地域だけでなく、感染が報告されていない地域でも確認されています。
SFTSウイルスは主にこのようなマダニ類によって媒介されると考えられており、野生動物やイヌ・ネコなどの動物がSFTSウイルスの抗体を高確率に保有していることから、マダニとこれらの動物との間でSFTSウイルスの生活環が成立していると考えられています。
SFTSの治療薬として承認された「ファビピラビル」
SFTS治療における大きな進展が、抗ウイルス薬「ファビピラビル」の登場です。
本剤は、2024年6月、SFTSに対する効能・効果が日本で追加承認され、世界初のSFTS抗ウイルス治療薬となりました。
国内の臨床試験では、企業治験では、ファビピラビル投与例の死亡率は13.0%でした。
また、非投与群を用いた比較解析では、ファビピラビル投与により、既報と比較して致死率が約半減したと報告されています。
これまで対症療法が中心だったSFTS治療に、新たな治療選択肢が加わったことは大きな進歩です。
現時点ではヒトのSFTSに対する承認であり、イヌやネコのSFTSに対する承認薬ではありません。
今後、獣医療領域における治療への応用についても研究の進展が期待されます。
まとめ
SFTSの発生は年々増加し、発生地域も拡大しています。
ファビピラビルの承認によってヒト医療では治療の選択肢が増えましたが、感染そのものを防ぐ重要性は変わりません。
イヌやネコに対する通年のマダニ予防に加え、SFTSが疑われる動物を診療する際には適切な感染予防対策が必要です。
ワンヘルスの一端を担う獣医師として、飼い主さまへのマダニ予防の啓発と、自らの感染防御を徹底することが重要です。
獣医師J
【参考情報】
(1) 感染症発生動向調査で届け出られたSFTS症の動向について
(国立健康危機管理研究機構 感染症情報提供サイト>感染症サーベイランス情報のまとめ・評価)
(2) 重症熱性血小板減少症候群に対する世界初の抗ウイルス薬の開発
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