元気だと思っている飼いイヌに潜む糖尿病などの疾患を見逃さない診察のポイント

動物病院に受診する理由はさまざまですが、ワクチンや健診など、飼い主さまは病気だと思わないで愛犬を動物病院に連れて来ることが少なくありません。そのようなとき、糖尿病を含めた病気のサインを見逃すことがなければ、病気の早期発見・早期治療になりますし、飼い主さまの信頼も得られるでしょう。

今回は糖尿病を中心に、飼い主さまが気付いていない病気のサインを見抜くためのポイントを見ていきましょう。

動物病院スタッフが把握しておくべき糖尿病の症状

糖尿病には典型的な症状があります。
病気のサインを見逃さないためには、しっかり症状を頭に入れておく必要があります。まずは簡単に糖尿病の症状を復習しておきましょう。

1.多飲多尿

血糖値がある一定以上になると、腎臓から尿に糖分が漏れてきます。これを「腎臓の閾値」と呼びますが、イヌでは180mg/dL、ネコでは220~250mg/dLが一般的です。

血糖値がそれより高くなると、尿中に糖分が漏れ出してきます。尿に糖が漏れ始めると、尿の浸透圧が上がるため、一緒に尿中に出ていく水分が増えてきます。

尿糖に伴う尿量の増加は体の水分不足を引き起こし、多飲につながります。その結果、糖尿病では多飲多尿という特徴的な症状が起こってくるのです。

2.体重減少

糖尿病のイヌの体内ではインスリンが不足するため、血糖値が高くても糖を栄養源として使えません。そのため、糖に変わるエネルギー源として筋肉や脂肪の分解が起こります。つまり、糖尿病のイヌでは、いくら食べても筋肉や脂肪が分解されるため、体重がどんどん落ちてしまいます。

3.その他の糖尿病の症状

イヌの糖尿病では、「多飲多尿」と「体重減少」が注意点となりますが、その他以下のような症状が出ることがあります。

・被毛の悪化
・繰り返す膀胱炎や皮膚炎
・傾眠傾向(寝てばかりいる)

症状を見逃さないための稟告の取り方

イヌの糖尿病では比較的わかりやすい症状が出るにもかかわらず、飼い主さまが気付いていないということが意外と多いです。

「体調に変わりはないですか?」と聞くだけでは糖尿病のサインを引き出すことができないこともあるため、飼い主さまには以下のような質問をしてみることをおすすめします。

・最近、お水が良く減っていませんか?
(1日○○mL以上飲んでいませんか?)
・トイレを掃除する頻度が増えていませんか?
・体が軽くなったと感じませんか?
・骨がごつごつしてきていませんか?
・毛がごわごわになってきていませんか?

病気を見逃さないためには、広く質問することが大切です。しかし、怪しいと思った場合にはピンポイントの質問をしたり、具体的なエピソードや数値や擬音などを使ったりして、飼い主さまの心当たりを探るような質問をすることも有効です。

実際に、多尿はないと答えた飼い主さまに、トイレの汚れについて質問すると「最近、ペットシーツを変える頻度が増えたかも」と答えてくれたケースもあります。

質問の内容は同じでも聞き方を変えることで有用な稟告が引き出せることもありますので、質問の聞き方を今一度考えてみるのはいかがでしょうか。

症状を見逃さないための身体検査と各種検査

では次に、糖尿病のサインを見逃さないためにできる身体検査と必要な検査についてお話いたします。

1.糖尿病患者の身体検査

糖尿病患者の身体検査では、以下のような症状に注意をしましょう。

・体重減少(削痩)
・毛艶の低下(特にネコではグルーミングの回数が低下しますので、被毛の悪化が出やすいです)
・脱水(ツルゴールの低下や粘膜の乾き具合など)
・陰部の汚れ(尿量の増加の可能性)

体重減少に関しては、ぱっと見ではわかりづらいこともありますので、必ず診察のたびに記入しておくことが大切です。身体検査で痩せていると感じていなくても、カルテを見たときに体重が数%減っていることに気付くことがあります。体重は数値としてしっかり記録をしておきましょう。

2.糖尿病の検査

糖尿病は血液検査と尿検査のどちらの検査でも診断は可能です。ただし、一過性の高血糖(ストレスなど)の可能性や合併症の有無などを判断するためには、血液検査も尿検査も両方行うのが望ましいと考えられます。

糖尿病の診断のための検査には、血糖値や尿糖だけでなく、フルクトサミンや糖化アルブミンなどが有効です。
また、糖尿病の合併症を調べるために、尿沈渣(膀胱炎の有無)、尿中(血中)ケトン濃度、血液生化学検査、眼科検査などが必要になることがあります。

まとめ

糖尿病は検査をすれば診断自体は難しくない病気です。ただし、健康な動物にむやみに検査をすすめることで、飼い主さまの不信感を招いたり、過剰医療ととらわれてしまったりすることもあります。

予防シーズンを迎えるにあたり、糖尿病を含めた病気を見逃さないために、稟告の取り方や身体検査の仕方などもう一度見直してみましょう。

獣医師C

 

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