ネコの糖尿病はインスリン分泌の低下とインスリン抵抗性の発現によって生じ、遺伝的素因をもとに、高齢、肥満、感染症、ストレスなど様々な要因が関与しています。
ネコの糖尿病では食事療法とインスリン治療が基本とされ、食事療法では食後の血糖値上昇を是正するとともに、肥満を改善させることが重要とされます。
現在では、各フードメーカーより様々な糖尿病療法食が販売されています。
今回は糖尿病ネコの食事療法の基礎と、高齢ネコに多い慢性腎疾患併発時の食事療法とインスリン治療について、2回にわけてご紹介します。
糖尿病療法食の違いによる効果
糖尿病療法食には従来、肥満予防として低脂肪、高繊維食(Hill’s w/d、スペシフィックFRW、FRD)と、近年多く用いられている低炭水化物、高タンパク食(Hill’s m/d、ロイヤルカナン 糖コントロール)が適応とされます。
以前に我々の研究室では、正常ネコへの糖尿病療法食給与による血糖変動およびインスリン分泌量の変動を検討しました。
この研究では高タンパク食と高繊維食を給与した場合、血糖変動は高タンパク食(ー○ー)の方が低い値を示しましたが、インスリン濃度変動は高繊維食(ー▼ー)の方が食後あまり上昇することなく緩やかに推移したことを明らかにしました。
(Mori et al. 2009.)
図1.糖尿病療法食給与による
血糖変動(左)およびインスリン分泌量変動(右)
また、過去の報告では低炭水化物、高タンパク食の方がインスリン治療からの離脱が高いといわれていますが(Bennett N et al. 2006.)、実際には両者ともに非常に重要であり、どちらも糖尿病ネコの血糖コントロールを改善させると考えられます。
日本獣医生命科学大学 小田民美、左向敏紀