前回に引き続き、糖尿病ネコに他の疾患が見つかった場合の食事療法とインスリン投与量についてご紹介します。症例は、糖尿病に加えて腎疾患を併発したネコについてです。
その1はこちら
Case:腎疾患併発 糖尿病ネコ
・Mixネコ、14歳齢、去勢雄、6 .0 kg
・糖尿病罹患歴7年(インスリングラルギンにて治療中)
本学初診時は7歳齢で、糖尿病のインスリン療法開始の相談ということで来院されました。初診時は特に併発疾患はなく、糖尿病療法食(ヒルズm/dドライ)およびインスリングラルギンにて良好な血糖コントロールを長期間維持していました。
初診から1年半後(表1の腎数値上昇時)に飼い主さまからの稟告で、「多飲多尿および尿の色が薄くなってきた」ことが分かり、血液検査にてBUN、CREの上昇が認められました。
このため、腎臓病療法食(ロイヤルカナン腎臓サポートドライ)に食事を変更しました。
この時点では食欲不振や体重減少、元気消沈などの症状は認められず、容易に食事変更が可能でした。また、飼い主さまの希望により皮下補液も自宅で定期的に(2日に1回ペース)実施することができました。
腎臓病療法食、輸液療法開始3ヵ月後(表1の腎臓病療法食、輸液療法開始後)にはBUN、CREの顕著な低下を認めることができましたが、食事を糖尿病療法食から腎臓病療法食に変更したため、GAは32%に上昇し、インスリン投与量もおよそ1.3倍に増量しました。
また、飼い主さまより「皮下補液を実施した日はぼーっとしていることが多く、活動性低下、軽度の低血糖症状が起きていることもある」との稟告がありました。自宅にて簡易血糖測定器で血糖値を測定してもらったところ、確かに皮下補液を行った後に急激な血糖値の低下(Glu 50mg/dL以下)が認められており、皮下補液によるインスリン効果時間の変化の可能性が指摘されました。
日本獣医生命科学大学 小田民美、左向敏紀