糖尿病性腎症を見逃さないように

糖尿病の治療には、血糖値のコントロールだけではなく合併症の管理も重要です。イヌの糖尿病の合併症のうち、腎症は慢性腎不全の病態をとるため、血液検査の数値だけを指標にしていると発見が遅れてしまうことになります。より早期に診断をして治療に入るためには、尿タンパクのモニタリングが推奨されます。尿タンパクは腎症の初期から漏出するため、これを指標にすることで早期発見・早期治療が可能になります。

 

イヌの糖尿病の合併症

イヌの糖尿病の診断自体は容易です。しかし、腎臓の糖排泄閾値がネコよりも低く180〜220mg/dLとされており、糖排泄閾値を超える血糖値が持続すると、多飲多尿や体重減少といった臨床症状が現れ、さらに合併症が発症する危険性も高くなるため、数年単位の長期予後については注意が必要です。

特に気をつけるべき合併症には白内障や網膜症、腎症があります。白内障や網膜症は厳密に血糖コントロールをしても発症してしまうことが多いですが、その点腎症は血糖コントロールに発症が影響を受けやすく、コントロール不良の期間が続くと早期に発症するとされています。

 

糖尿病性腎症とは

糖尿病の合併症の中で腎症は、進行性であり慢性合併症と言えます。臨床的な慢性腎不全の症状は見えにくく、それでも腎臓への障害は進行しているため、糖尿病の治療中は常にモニタリングが必要です。病態としては、高血糖が持続することで糸球体が障害され、微量アルブミンが漏出するようになります。やがて、タンパク尿が明らかになり、腎機能の低下が進むことで食欲低下や嘔吐といった臨床症状が認められるようになります。治療は慢性腎不全に準じ、食事療法や輸液療法などを行います。

 

尿タンパクによる腎症の検出

血液検査のうち生化学検査項目であるBUNやクレアチニンは腎機能の指標として利用されますが、これらに異常値が出てきた段階では既に腎機能は25%しか残存していません。しかしながら、尿タンパクに着目することでもっと早期に腎症を検出することができます。

尿タンパクは日内変動が大きく、尿量によっても測定濃度が変わるため、クレアチニンで補正する尿タンパク/クレアチニン比(UPC)や、尿タンパクの中の微量アルブミンをクレアチニンで補正する尿中微量アルブミン/クレアチニン比(UAC)が早期腎症の検出に有用です。この二つを比較すると、腎臓障害に伴いUACはUPCに先行して上昇します。

 

まとめ

タンパク尿に着目してモニタリングをすることは腎症の早期発見に繋がります。早期発見ができれば動物にとってより苦痛の少ない期間を伸ばすことができます。血液検査だけでなく、尿タンパクの重要性を認識して糖尿病から発症する腎症の早期発見・治療に繋げましょう。

獣医師K

 

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