ネコにおいて下部尿路疾患は比較的遭遇する疾患です。その中で、尿管閉塞は内科的治療のみで解決できず問題になることが多いです。原因としては、結石・炎症、先天性の奇形などが報告されていますが、中でも尿管結石が多数を占めています。
尿管閉塞の原因
ネコの尿管閉塞はおよそ90%程度が尿管結石により発生すると言われています。そして結石の種類は9割以上がシュウ酸カルシウムと報告されています。ストラバイトと異なり、シュウ酸カルシウムは食事療法や薬剤で溶解するのが困難であり、未だ不明なことが多いのが現状です。さまざまな年齢で起こりますが、中高齢が比較的多く雌雄差は認められていません。
尿管閉塞の臨床徴候
片側の尿管閉塞で腎機能が保存されている場合は特異的な身体検査所見を示さないことがあります。
また、尿検査において結石で尿管が不完全閉塞している症例(特に腎結石が併発している症例)では血尿が認められることがあります。また、尿管閉塞症例の約3割で尿から細菌が検出される、6割で尿比重が低下するという報告があります。
このように閉塞の程度や潜在疾患の重症度によって臨床兆候はさまざまです。一般的には元気消失・食欲不振・体重減少・嘔吐・攻撃的になるなどの性格の変化・腹部痛・血尿などがみられます。比較的高齢での発症が多いため、潜在的に慢性腎臓病を罹患している場合があり、完全尿管閉塞が起きてしまうと仮に片側性であっても重篤な腎不全に移行することがあります。
尿管閉塞の診断と治療
画像検査が診断のメインになります。尿管結石の診断は腹部単純エックス線検査単独では7割近く、超音波検査との組み合わせでは9割近く確定すると言われており、両方の検査を実施することが大切です。それでも診断が困難な場合はCT検査が必要になることがあります。
そして、画像診断とともに、身体検査・尿検査・尿培養・血液検査を実施する必要があります。背景に心疾患や呼吸器疾患がないかどうか、腎臓の状態を把握することが大事です。
治療としては、内科的治療で尿管結石が膀胱に移動したと言う報告がありますが、実際は薬の投与によって尿管結石が移動するかどうかを事前に把握することが難しいため 、試験的治療と言わざるを得ません。そのため、尿管閉塞のネコに内科的治療を実施した場合に効果がないと判断されれば、速やかに外科的治療に移行する必要があります。
外科手術として、尿管切開、腎切開、尿管切除があげられます。しかし、その手術の難しさと合併症や副作用 等、問題がありました。そこで最近では、それ以外の方法が検討されています。
まず、尿管ステントはさまざまな原因による尿管閉塞に対して設置されるようになっています。尿管ステントは外科的治療に比べ合併症の発生率が低く、外科治療と効果は同程度であると判断され有用な治療選択と考えられています。
さらに、SUBデバイスの特徴は腎臓および膀胱にそれぞれカテーテルを設置し、閉塞部分を完全にバイパスし、腎臓から膀胱までの流れを維持することができます。
いずれの方法も高度な手技、術後管理を要するため、ネコの尿管閉塞に対する外科的治療に関しては高度医療が提供できる診療施設での実施が望ましいと考えられます。
まとめ
日頃のネコの診療で尿路疾患に遭遇することは多くありますが、尿管結石・尿路閉塞に関しては発見が遅れてしまうと予後が大きく変わってきます。日頃から健康診断に尿検査を取り入れ、尿石ができやすくないか、などを知っておくことは有用だと思われます。
獣医師A
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