高齢ネコは慢性腎臓病に罹患していることが多く、なかでも尿に蛋白が含まれている場合は予後が悪くなることが多いため生存期間に影響がでてきます。そのため、蛋白尿の存在は尿検査で確認する必要がありますが、いくつか注意点があります。
その尿蛋白は腎臓によるもの?
蛋白尿は3つに分類されます。腎前性・腎性・腎後性蛋白尿です。
腎前性の場合は、生理的な蛋白尿や、ベンズジョーンズ蛋白のような腫瘍などに起因するものなどが挙げられます。
腎後性の場合は、腎盂や生殖器からの分泌液の混入で起こります。血尿や精子が混入することで偽陽性を示してしまいます。
これらの2つが否定された段階で腎性蛋白尿と考えます。
尿蛋白を測定するにあたり注意すること
院内の尿検査は、尿試験紙を使用した検査、尿比重計、顕微鏡での検査が主流です。尿試験紙を使用することで尿蛋白を調べることができますが、注意しなければならないことがあります。
尿試験紙の場合、尿が濃縮尿だと2+以上がでてしまうケースがあります。さらにpHが8以上の場合も、尿蛋白が偽陽性になることがあります。
そのため、尿蛋白を定量的に測るためには尿蛋白クレアチニン比が有効です。尿蛋白クレアチニン比を外注で検査している場合は、なかなか毎回の検査で実施するのは難しいかもしれませんが、慢性腎臓病のネコの場合は尿蛋白クレアチニン比のボーダーラインである0.2~0.4でも生存期間に影響してくるので、尿試験紙で蛋白が陰性だったとしても確認した方が良いと考えられます。
尿蛋白がでてしまったら
慢性腎臓病のネコで蛋白尿が出る場合、寿命に影響することが知られています。尿蛋白が出た場合、まずは治療可能な併発疾患が無いかを確認します。また、場合によっては腎生検の実施を考慮します。治療としてはACEIやARB製剤の使用、および腎臓病用の食事療法を行い、定期的に腎臓のモニターをしていきます。
まとめ
慢性腎臓病に罹患しているネコは多く、なかでも蛋白尿が出ている場合は予後不良です。蛋白尿は尿試験紙で確認できますが、濃縮尿やpHによって正確に診断できないことがあります。基本的には尿試験紙で陰性の場合は尿蛋白クレアチニン比も低値のことがほとんどです。しかし、慢性腎臓病と診断されたネコに関しては、尿蛋白クレアチニン比がボーダーラインであっても生存期間に影響するため、低値であっても測定することをおすすめします。
獣医師C
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