健康診断はやっぱり大切!

年々飼い主さまの意識の向上によりイヌおよびネコの健康診断を受ける方が増えています。一般的に健康診断といえば院内での血液検査が主ですが、腎臓病に関しては血液検査上(尿素窒素およびクレアチニン)に異常が見つかる頃には腎臓のおよそ75%が機能していないと考えられています。尿素窒素およびクレアチニンに異常が出る前に腎臓病を早期発見することで、注意深い経過観察および早期治療が可能となり、生存期間の延長につながるため、当然のことながら早期発見は重要です。

健康診断を実施したトイプードルの一例

10歳齢、4.3㎏(BCS3/5)、避妊雌のトイプードルです。フィラリア予防の時期には毎年血液検査を行っていましたが、特に異常は認められませんでした。8歳齢から中高齢ということで、血液検査に加えて尿検査を毎年実施し、10歳齢時の尿検査で尿比重の低下が認められました。尿比重は1.025、この時点でのBUN22mg/dL、Cre1.2mg/dL。なお、蛋白尿は出ておらず、多飲多尿については感じられないとのことでした。

追加の検査

尿検査での比重の低下が認められたため、追加検査として腎マーカー検査および画像検査を実施。画像検査では著しい腎委縮は認められず、両腎ともに軽度の石灰化および右腎に腎嚢胞が認められました。腎マーカー検査SDMAでは18 μg/dLでした。

考察

SDMA 14 μg/dLを継続的に超える場合はIRISステージ1の慢性腎臓病を診断されるため、1ヵ月後に再測定し、SDMA 16 μg/dLであったため、慢性腎臓病IRISステージ1と診断しました。その後は3ヵ月毎の血液検査および1ヵ月毎の尿検査を行っています。血液検査における腎パネルはいまだ基準範囲内ですが、尿比重は変わらず低値のままなので、ステージが上がり次第、処方食や腎臓病薬の使用を予定しています。

今回、院内の血液検査だけでは初期の腎臓病を診断できず、次のフィラリアの時期までに腎臓病の悪化が予想されたので尿検査を実施することで精査でき、初期の慢性腎臓病を診断できました。

まとめ 

血液検査は健康診断でよく行われますが、腎臓病に関しては数値に現れるまでに時間がかかってしまいます。腎マーカー検査を積極的に健康診断に含むことも大切ですが、まずは尿検査を行うことが重要と言えます。尿検査で異常が認められれば、より詳しい精査を飼い主さまに提案することができ、いち早く腎臓病を発見することにつながります。血液検査よりも尿検査の方が費用的にも実施しやすいので、特に高齢のイヌやネコの場合は積極的に実施することが大切です。

獣医師G

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