いろいろな人獣共通感染症のリスクが啓発されていますが、現時点で一番“ヤバイ”のは重症熱性血小板減少症(SFTS)だと思います。とくに獣医師や動物看護師は、ハイリスクになります。今回は、このリスクをみなさんに認識してもらうために、SFTSのことを現場の獣医目線で書いてみます。
重症熱性血小板減少症(SFTS)とは
SFTSは、ウイルス感染症です。ダニ媒介性です。
動物病院の獣医療関係者が外でダニに咬まれることはあまりないですが、問題は、イヌ、ネコからわりと簡単に感染することです。現実的なリスクがあります。これまでのヒトの感染者数は500を超えています。ヒトでも基本的に治療薬はありません。
インフルエンザ薬で新型コロナ治療薬として期待されたファビピラビル(アビガン)が使われることもあるようですが、効果は確定していません。重篤な患者さんに対してはステロイド剤も使用されることがあるみたいですが、どちらかというと対症療法的な使用だと思います。ウイルスを排除するわけではないです。要するにこれといった治療薬はなく、ヒトでの致死率は〜30%程度で、高齢なヒト(特に50歳以上)ほど重症化するリスクが高いようです。
動物への影響と動物からの感染
イヌ・ネコともに感染しますが、ネコの感染が目立ちます。これまでにネコは300例以上が診断され、致死率は50%を超えると思われます。ちなみにイヌの診断数は10例超です。
具合が悪いネコが動物病院に運び込まれ、SFTSを意識せず治療して、飼い主さんや獣医療チームが感染します。発症しているネコの血液や口や肛門などにはウイルスが存在します。ネコに咬まれたり、針刺し事故をしたり、血液に触れたりすることで感染します。
繰り返しますが、実際に感染してしまうとそれなりの確率で死んでしまいますので、早めにSFTSの可能性に気づいて防護を行うことが大切です。