トイ・プードルの糖尿病に関する正しい検査と診断について

毎年、人気犬種ランキングの1位に選ばれる犬種であるトイ・プードル。遺伝的になりやすい病気として膝蓋骨脱臼や進行性網膜萎縮症などが知られていますが、それ以外にも糖尿病の好発犬種でもあります。これまでは犬の糖尿病の病態として、膵β細胞の減少に起因したインスリン欠乏によるⅠ型糖尿病と、肥満などに起因したインスリン抵抗性によるⅡ型糖尿病に分けられてきました。しかしながら近年、人やネコとは異なり、イヌでは肥満が原因でⅡ型糖尿病へと進行しないことがわかってきたのです。今回は、新たにわかってきたことも交えながら、トイ・プードルで多い疾患の一つである糖尿病に関して、主な症状、正しい検査と診断方法についてお伝えしていきます。

主な症状

糖尿病の初期に見られる症状は、多飲多尿、多食、体重減少です。進行してケトアシドーシスに移行していくと食欲廃絶、元気消失、嘔吐、下痢、脱水、削痩などの症状がみられるようになり、早急に適切な治療を施さないと命に関わることも少なくありません。また、インスリン治療による血糖値のコントロールがうまくいかず、長期の高血糖が続くと慢性の糖尿病合併症として白内障を併発してしまうので注意が必要です。

検査と診断

上記の主な症状に加え、空腹時の血糖値が200mg/dLを超える高血糖であること、また尿糖陽性であることをもって糖尿病と診断が可能です。その他にも、フルクトサミンや糖化アルブミンなど長期血糖マーカーを用いることで、採血による一過性のストレス性高血糖を除外することもあります。また、糖尿病での尿検査では、尿糖の確認以外にもケトン体の有無を確認します。さらに、易感染性疾患でもあることから膀胱炎にもなりやすく、その独特な匂いや色をチェックし、尿沈渣を鏡検することで見逃しが少なくなります。

まとめ

これまでは肥満が原因で起こる疾患の一つとして糖尿病が挙げられていましたが、イヌの場合はそれが該当しません。しかし、実際には肥満であるイヌにおいて糖尿病と診断する機会があります。こういったケースではクッシング症候群や甲状腺機能低下症など、肥満を引き起こす疾患が隠れていないかどうかも確認することが重要です。活動量の多いトイ・プードルですが、自宅で過ごされる時間が増え、太っているトイ・プードル に遭遇する機会は少なくありません。糖尿病を正しく診断するためには、肥満を含め、関連する疾患についても網羅しておく必要があると言えるでしょう。

獣医師M

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