ネコの風邪「ヘルペスウイルス感染症」とは?

いつの頃からか、ネコのヘルペスウイルス感染症の症状が、ヒトの風邪の症状と似ていることから“ネコの風邪“というような表現が使われるようになりましたが、実際には”猫風邪“という病気は存在しません。しかしながら、飼い主さまにはとても伝わりやすい表現なため、猫風邪という言葉を使用してしまうことが多いのも現実です。また、他にも私たちが猫風邪と表現する背景として、クラミジアやカリシウイルス感染症もヘルペスウイルス感染症と同じような症状を示し、臨床現場ではその区別をつけず猫風邪と表現して治療を開始した方が獣医師にとっても都合がいいからなのかもしれません。今回は、その猫風邪の一つであるヘルペスウイルス感染症について、その症状と治療法および予防法をお伝えします。

猫ヘルペスウイルスの症状と治療法

初期には発熱、くしゃみ、食欲不振、目および鼻から漿液様の分泌物が見られます。また、充血と浮腫が伴う結膜炎が見られ、潰瘍性角膜炎やぶどう膜炎になることもあります。重度では、発咳や呼吸困難に至ることもあり注意が必要です。

治療法としては、全身状態に問題がなければ鼻や目にインターフェロン含有の点眼薬を使用したり、アシクロビルなどの抗ウイルス薬を使用したりします。全身状態が悪い場合は、輸液や食事療法、抗炎症剤の使用を行う他、場合によってはアシクロビルやファムシクロビルなどの抗ウイルス薬の全身投与が有効とされています。

猫ヘルペスウイルスに感染しないための予防について

日本国内で販売されている3種の混合ワクチンの中にはヘルペスウイルスが含まれており、このワクチンを接種することが一番の予防になるでしょう。また、感染ネコが確認された場合、環境中にばら撒かれたウイルスを不活化するために、次亜塩素酸による消毒が有効とされています。

まとめ

猫ヘルペスウイルスに一度感染してしまうと、回復した後も潜在的にウイルスを保有した状態であるキャリアへと移行してしまいます。何らかのストレスを受けることで再活性化し症状が再燃してしまうことも少なくありません。感染ネコは生涯にわたってウイルスを保有してしまうことから、蔓延させないためにも全てのネコにワクチン接種をして集団免疫を獲得すること、そして、感染ネコは症状の再燃およびウイルスの排泄をさせないためにも清潔な環境でストレスなく飼育することが大切であることを飼い主さまに伝えましょう。

獣医師I

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