イヌとネコを中心とした診療をされている先生方にとって、痛風という病気は、特殊な遺伝性疾患を除いては人間でしか発症しない、いわゆる「贅沢病」のイメージが強いのではないでしょうか。それに対して、爬虫類や鳥類を診療する先生方にとっては、日常的に遭遇する、かなり一般的な病気の一つとなっています。驚くべきことに、痛風という同じ病名でありながら、その原因は哺乳類と鳥類では大きく異なります。今回は、痛風になりやすい鳥種であるセキセイインコに関する痛風の原因と、その治療法や栄養面について解説します。
痛風の原因
痛風の原因は非常に多岐にわたり、血漿中に溶解できる許容量以上の高尿酸血症を引き起こせば、痛風を発症してしまう可能性があります。中でも多いのは、腎性の痛風です。腎機能が30%以下になると高尿酸血症になるとされており1)、足などの関節にできる関節痛風と、腎臓や心臓にできる内臓痛風があります。他にも、幼鳥で他個体と同じ飼育環境であるにもかかわらず、若くして痛風になってしまうセキセイインコもいることから遺伝的な要因もあるとされています。また、次にお伝えする栄養的に問題がある場合にも痛風になることから、食餌内容なども原因のひとつに挙げられます。
治療法と栄養指導
痛風の治療は原因によって異なりますが、共通する治療としては高尿酸血症の改善と、炎症反応による疼痛の管理が中心です。具体的には、アロプリノールなどの尿酸合成阻害剤や、メロキシカムなどのNSAIDsを使用します。栄養的な問題で痛風になることもお伝えしましたが、具体的には高蛋白質食、カルシウム及びビタミンD過剰摂取、ビタミンA欠乏または過剰症、マグネシウムやリンの欠乏などが報告されており1,2,3)、日常的に人間のご飯を与えていないか、市販のビタミン剤を過剰に添加していないかどうかを確認し、その原因に応じた過不足のない栄養補給と適切な指導をするのがポイントです。
まとめ
哺乳類の場合、摂取した蛋白質の最終生成物は尿素であるのに対し、鳥類では尿酸です。人間の痛風と異なり、セキセイインコの痛風に遭遇した場合、哺乳類でいう老廃物を尿として排泄できない状態、つまり腎不全になっている可能性が高く、かなり危険な状態にあることを認識し、細心の注意を払って診療に臨む必要があるでしょう。また、痛風という言葉が持つ飼い主さまの病気のイメージは重篤なものではないことも多いため、危機感を持って治療に臨んでいただくように説明することも重要です。
獣医師G
- Echos MS TL(2006):Evaluating and Treating the Kidneys.In Harrison GJ,Lightfoot TL(eds):Clinical Avian Medicine Volume Ⅱ
- Lumeji JT,Remple JD.(1991):NEPHROLOGY.In Ritchie BW, Harrison GJ, Harrison LR(eds),Avian Medicine:Principle And Application.
- Murray MJ,Taylor M(1999):Avian renal disease:endoscopic applications.Sem Avian Exot Pet Med,8:115-121