イヌ・ネコの尿沈渣検査(鏡検)の注意点について

尿沈渣検査は、尿の遠心分離によって沈澱した細胞や結晶などの固形成分を調べる検査です。腎臓の遠位尿細管の異常から膀胱の異常まで、尿路系の上部から下部の状態を把握する上で必須の検査です。今回は、イヌ・ネコの尿沈渣検査(鏡検)の注意点と、客観的評価のために気をつけるべきことについてお伝えしていきます。

イヌ・ネコの尿沈渣検査(鏡検)の注意点

まずは、尿サンプルの適切な扱いが必要です。膀胱穿刺など院内で直接採取する尿であれば問題ありませんが、すぐに持参できず冷蔵庫で保管して冷却されている尿サンプルの場合は常温に戻して行わなければなりません。また、採取方法にも注意が必要です。猫砂や便などが混ざった状態の尿サンプルや、地面や床に落下した尿をサンプルとして使用する場合、混入する可能性が高い異物に対しては尿沈渣検査時に異常なものと誤診しないようにしましょう。

イヌ・ネコの尿沈渣検査(鏡検)の客観的評価のために気をつけること

尿沈渣検査で確認される全ての異常所見について、実際に把握しておくことが大切です。具体的には、赤血球、白血球、結晶、円柱、上皮細胞、微生物などが挙げられます。例えば「ウォーリーを探せ」で、ウォーリーの特徴を知らずにウォーリーを見つけることができないように、疑うべき異常所見の形状を知ってイメージしておかないと、鏡検したときに目の前に見えていても認識できずに見逃してしまいかねません。

また、高倍率で1視野にどれぐらいの数の細胞や結晶が見られたら正常なのかあるいは重症なのか、同じ評価ができるようなルール作りも必要です。もちろん、鏡検したときの視野について満遍なく全体を観察し、偏った評価をしないように心がけなければなりません。

まとめ

日常的に遭遇する疾患の中でも泌尿器系の疾患は非常に多く、イヌ・ネコの尿沈渣検査をルーティンで行っている病院も多いのではないでしょうか。現場で長く診療されている先生方は、ある程度傾向が掴めていると思いますので、症状と検査結果が合うか答え合わせをするレベルに達している先生も少なくないでしょう。ただし、何事も思い込みは禁物で、異常所見を見逃してしまわないよう注意が必要です。客観的評価のために必要なのは、過度な先入観を持たないこと、そして常に初心を忘れず丁寧に見ていくことに尽きるのかもしれません。

獣医師E

客観的な評価をするための尿沈渣検査の手技

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