猫特発性膀胱炎は、ネコの下部尿路疾患の多くの割合を占めます。症状は血尿や頻尿、不適切な排尿などさまざまです。原因は複合的であり、ストレス・ホルモン異常・アレルギー反応・膀胱粘膜異常などが考えられています。
治療はストレス要因の除去、再発例や重症例にはアミトリプチリン、ブプレノルフィンの投与などが行われます。発症する年齢は2-7歳齢で多いと言われています。発症には環境の変化によるストレス増加が関与していることが多いと考えられており、飼育環境を変えることで、症状の改善が見られることがあることが知られています。
環境改善による症状の変化
飼育環境を変えることによる症状の変化について調査した報告をご紹介しましょう。2006年に報告された研究によると、環境改善実施後の特発性膀胱炎による下部尿路徴候の変化を以下のように報告しています。
・方法
尿石症や細菌性尿路疾患を除外して診断された特発性膀胱炎のネコ46頭を対象に調査を行った。ストレスを軽減するために次のような対策を行った。
・ネコに罰を与えない
・できるだけウェットフードに変更する
・水分を多く摂らせる
・トイレの砂を無香料のものにする
・トイレ管理の改善
・高いところに登って見下ろせるようにする
・隠れられる場所を用意する
・爪研ぎを用意する
・よく遊ぶ
・ネコ同士のけんかを防ぐ
一部のネコにはアミトリプチリンやアセプロマジンの投与も並行して行われた。
・結果
平均10ヶ月の追跡調査の結果、70-75%のネコで下部尿路徴候が見られなくなった。恐怖心や神経質、上部気道症状が有意に減少し、攻撃性や消化器症状は減少傾向にあった。これらの結果は環境改善がストレス反応系の活性化を低下させたことによるものである可能性が考えられる。
猫特発性膀胱炎には環境改善が有効
上記で紹介した報告から、猫特発性膀胱炎の下部尿路徴候の改善には飼育環境の改善が有効であることがわかります。また、環境の改善により下部尿路徴候だけでなく上部気道症状や消化器症状の改善も見られています。特発性膀胱炎のネコでは、薬物療法を開始する前に飼育環境の改善を試してみてもいいのかもしれません。
まとめ
猫特発性膀胱炎は猫の下部尿路疾患の多くの割合を占め、さまざまな症状を引き起こします。今回紹介した報告では、猫特発性膀胱炎に対して環境の改善が有効であることがわかりました。特発性膀胱炎ではアミトリプチリンやブプレノルフィンの投与も検討されますが、まずは環境改善を取り入れてみてもいいかもしれません。
<参考>
CA Tony Buffington, Jodi L Westropp, Dennis J Chew, Roger R Bolus. Clinical evaluation of multimodal environmental modification (MEMO) in the management of cats with idiopathic cystitis. Journal of Feline Medicine and Surgery (2006) 8, 261-268
獣医師Y