イヌのがんは、多くが症状をきっかけに発見されており、健康診断で見つかる割合はごく少数です。
本記事では最新の疫学データをもとに、現在の臨床現場におけるがん検出の課題についてまとめました。
臨床現場のジレンマ:88%は「主訴」から始まる
先生方も実感されている通り、イヌの悪性腫瘍の多くは飼い主さまが何らかの異変に気づいてから発見されます。
2023年に発表されたFloryらの報告(J Vet Intern Med. 2023)は、この臨床的実感を裏付けるデータを提示しました。
359頭のがん診断症例における発見の経緯は以下の通りです。
88%:飼い主さまによる症状の申告
8% :他疾患の検査中の偶発的発見
4% :健康診断での発見
「症状が出てから」の診断では、根治的切除が不可能な浸潤・転移を伴っているケースも多く、治療の選択肢は大幅に制限されます。
予後改善のためには、この「4%:健康診断での発見」の割合を向上させることが重要です。
健康診断の頻度の考え方
がんは一般に加齢とともに発生リスクが高まります。
「症状が出てから」だけでなく、シニア期前後の健康診断などでより早期の発見につながる機会を設けることが重要です。
ある論文によると、がん診断の中央値年齢は 8.8 年であり、犬種・体格・性・腫瘍タイプによって診断年齢に有意な差がありました。
中でも体重(イヌのサイズ)は重要な因子であり、体が大きいイヌはより若年でがんと診断される傾向がみられました。
これらの結果に基づき、著者は「一般的には 7 歳でスクリーニングを開始し、大型犬や中央値が若い犬種では 4–5 歳からの早期検討を行うべき」と提言しています。
こういったデータから、健康診断の頻度は犬種や体格なども加味しながら、以下を目安に飼い主さまと相談の上実施するとよいでしょう。
成犬期 :年1回の健康診断で、個々の「正常」を把握・確認し、ベースラインを確立
シニア期以降:年2回の健康診断を基本に、画像検査や追加検査の選択肢を拡張
ハイシニア :全身状態と併存疾患を踏まえ、低侵襲で継続可能な検査を組み合わせる
特に大型犬において「4歳」という年齢は、多くの飼い主さまにとってまだ「若い・健康」という認識が強い時期です。
しかし、この時期からベースラインを確立し、定期的なモニタリングを行うことこそが、「変化」に気づくために重要な意味を持ちます。
まとめ:偶発的な発見から、意図的な検出へ
「食欲がない」「しこりができている」と来院された時には、すでにがんが進行している――。
このような事例を少しでも減らし、「がんを早期発見したい」「愛犬と健康に長く共に過ごしたい」という想いは、獣医療に関わるみなさま、そして飼い主さまに共通する願いです。
近年、飼い主さまの愛犬に対する健康意識も高まってきており、ペットの予防医療に対する関心も高まっています。
さまざまな医療技術が発展し、多くの病気が早期に発見される可能性は高まってきているように思います。
そういった要望に応えるため、定期的な健康診断を提案してはいかがでしょうか。
監修:アークレイマーケティング株式会社 学術サポートチーム
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