イヌの腎盂腎炎

腎盂腎炎は尿路感染症と併発して起こり、単独での発症は稀です。
画像上で診断する基準が明確でないため、獣医師による総合的な判断が必要です。また急性の腎盂腎炎は急性腎不全を引き起こすことがあるので注意が必要な疾患です。

腎盂腎炎発症のメカニズム

腎盂腎炎は尿路感染症と併発する疾患です。
尿路疾患といえばネコで多いイメージがありますが、ネコの場合特発性が多く、中でも尿路感染症はとても少ない疾患です。そのため、腎盂腎炎もネコよりもイヌの方が多発します。
尿路感染症の原因菌は大腸菌、ブドウ球菌、連鎖球菌、腸内細菌、プロテウス、クラブシエラ、シュードモナスが一般的であり、それぞれの菌の単独感染および混合感染など様々です。
細菌自体の毒性だけでなく、宿主の免疫学的問題も感染に強く関わってくると言われています。

腎盂腎炎の診断

腎盂腎炎の診断は尿路感染症の経過をみていくなかで総合的に判断します。
レントゲン検査や腹部エコー検査での明確な基準がないため、身体検査・血液検査・尿検査を行い、尿検査で細胞円柱の確認や、細菌培養の結果が陽性かどうか、血液検査・画像検査上で腎臓の異常所見がないか、腎盂穿刺による細菌培養の結果などで判断していきます。また免疫機能に関係してくるような基礎疾患がないかを確認します。

腎盂腎炎の治療

まずは腎盂腎炎を引き起こす原因となる免疫機能に関係する疾患の治療から開始します。
糖尿病や、尿石症、クッシング症候群、腎不全などが相当します。
基礎疾患の治療を行いながら抗菌薬で治療していきます。抗菌薬の種類は感受性試験の結果に基づき決めていきます。
一般的に2週間ほどの治療で良化することが多いですが、混合感染や基礎疾患の種類によっては4週間ほど必要なケースもあります。良化したら再び、尿の培養検査を行い、陰性であることを確認した上で抗菌薬を中止します。

まとめ

腎盂腎炎は尿路感染症と併発するため、軽度なものであれば尿路感染の治療を行うことで軽快することもありますが、複雑なものだと治療が長期化し、最終的に腎不全へと移行するケースもあります。また、免疫に関係してくるような基礎疾患が隠れているケースもあります。
そのため、尿路感染症を疑う場合は、腎盂腎炎のことも考慮し、尿検査以外の検査の実施および、関連する基礎疾患も頭にいれて診断する必要があります。

基礎疾患の治療を行いながら、抗菌薬治療では耐性菌の問題があるため、尿培養検査を行い投与の開始および中止するタイミングを決定してください。

獣医師K

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