【日本獣医生命科学大学】血糖値測定器を一番活用いただいた飼い主さま

家庭での血糖値測定について

糖尿病動物の診療をしていると、飼い主さまから「家で高血糖や低血糖になっているか気になる」、「家で血糖値測定はできないでしょうか?」と相談されることがあります。

その場合は飼い主さまにポータブル血糖値測定器を紹介します。

そして動物の保定法、耳静脈の走行、耳静脈からの血液採取法および測定法を30分ほどかけてお伝えし、ご家庭でも試してもらうことがあります。

耳静脈からの血液採取方法および測定方法に関しては動画がありますので、参考にしてください(イヌおよびネコ)。
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このようにご家庭で血糖値測定を行ってくれる飼い主さまは、おそらく大学病院でも10頭の糖尿病動物がいたら1~3頭であり、イヌやネコの性格や飼い主さまのモチベーションにより利用率に差があります。

今回は非常に熱心に糖尿病の勉強をし、ポータブル血糖値測定器を一番利用して管理していただいた飼い主さまのお話です。

初期症状

その患者さまはネコの去勢雄で14歳でした。3年ほど前から糖尿病となり、本学やホームドクターで治療をしていましたが、なぜか食欲が安定しなくなりました。

来院時はケトアシドーシスの症状はあったのですが、改善しても食欲が戻りません。
また、様々な検査をしても明らかな食欲不振の原因がわかりません。

おそらくネコの食事に対する拒絶反応が起こっていると考えられました(ネコでは突然食事に興味を持たなくなってしまう症例が存在します。強制給餌のトラウマなどが原因かもしれません?!)。

 

糖尿病でなければまた食べるようになるまで待ってもよいのですが、糖尿病があるので食べなければインスリンが打てません。インスリンが打てないと高血糖で脱水を起こします。
数か月そんな悪循環に陥っていました。

そこで胃チューブを入れて、食事を胃から直接与える治療を試みました。
すると安定的に食事を与えることができ、体重も上昇していきました。

その後の経過

しかし、その後も血糖値は安定しません。

時には高血糖(600mg/dL以上)でケトン体が出現し、ときには低血糖が起こりました。

そのため食事を3回食にし、インスリンの投与も3回にしました(8時間おき)。

また、ちょっとのインスリン投与量の差で高血糖および低血糖になってしまうので、インスリン(レベミルを使用)を2倍希釈し、1回量を1.5~2.75単位(2倍希釈したもの)の間でインスリン量の調整をしてもらい、来院や電話で相談しながら治療を行うという形にしました。

 

ここまでの治療でも、こちらの提案したことに賛同し、管理をしてくれる飼い主さまに感謝をしていました。

実際、1日3回の胃チューブからの食事と、3回のインスリン投与はかなり大変だったかと思います。
さらに飼い主さまは、ほぼ毎日3~5回ずつ、耳からの血糖値測定を行ってくれました。

それにより、自宅にいながら血糖モニタリングができ、こちらとしても的確なインスリンの指示が可能となりました。

結果として体重は2倍以上になり(もともとは2kg位まで低下していました)、腎不全で亡くなるまで1~2年の間、良好な血糖コントロールを維持することができました。

 

もちろんすべての患者さまで上記のようなことができるはずもありません。

この患者さまは同じインスリン量で打っても日によって効き方が違いすぎるので、血糖をモニタリングしながらその日ごとにインスリン投与量を決定するしか方法がなかったのです(高血糖、低血糖で緊急状態に何度も陥っていたため)。

ポータブル血糖値測定器の有用性

このことより、ポータブル血糖値測定器は動物病院のみではなく、患者さまにとっても非常に有用なツールとなることがあります。

もし、飼い主さまから自宅で血糖値を測りたいというご要望があれば積極的にポータブル血糖値測定器を紹介し、自宅でも測定してもらうとよいと思います。

低血糖の場合にはその対処法を事前に指示しておき、高血糖が続く場合には早めに来院もしくは電話をしてもらうのもいいと思います。

 

近年では動物でも正確に血糖モニタリングができるポータブル血糖値測定器も発売されてきました。

このような最先端の医療機器をうまく活用して、糖尿病動物の多くがより良い血糖コントロールで安定した生涯を送れるようになればと思います。

 

日本獣医生命科学大学 森昭博、左向敏紀

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