イヌやネコの糖尿病は、一度発症すると完治させることは難しく、その多くはインスリン治療を必要とします。インスリン治療中のイヌやネコは、血糖値をうまく正常値付近で維持させることが大切ですが、インスリンの効きが強すぎれば当然、低血糖を引き起こすこともあります。
糖尿病のコントロールの目安となるのは、単回の血糖値測定、血糖曲線の作成、フルクトサミンや糖化アルブミンなどの血糖マーカーの測定などです。今回は、血糖マーカーと低血糖の関係についてお話いたします。
血糖マーカーの意味とその基準値
糖化アルブミンやフルクトサミンなどの血糖マーカーは、過去2週間程度の血糖値の平均の指標となる血液検査項目です。どちらの項目も、血液中の糖によってアルブミンやタンパクが糖化されるという性質を利用した、短期の血糖マーカーとなります。過去2週間で血糖値の高い時間が長ければ、糖化された物質が多くなり、数値が上がるという仕組みです。
これらの血糖マーカーを用いた糖尿病動物のコントロール目標は、健常動物(非糖尿病動物)の基準値に比べ、やや高めに設定されています。これは、血糖値の微妙な変動によって膵臓からインスリンを分泌できる健常動物に比べ、通常1日2回の注射で血糖値のコントロールを行う糖尿病動物では、血糖値が高めになってしまう時間があることを考慮した結果の解釈です。
血糖マーカーは低ければいいというものではない
糖化アルブミンやフルクトサミンなどの血糖マーカーは、基本的にその数値は低ければ良好な糖尿病コントロールができていると考えて問題ありませんが、低すぎるのも注意が必要です。
私は、糖化アルブミンの数値が健常犬の正常値に入っていた数例のイヌで、低血糖の症状を起こしていた症例を経験したことがあります。採血の時点では低血糖を起こしていなくても、糖化アルブミンやフルクトサミンが健常犬の正常値の範囲内かそれより下である場合は、低血糖に要注意です。血糖曲線を描いてインスリンの接種単位やインスリンの種類の変更などを行う必要が出てきます。
まとめ
糖化アルブミンやフルクトサミンなどの血糖マーカーは、1回の採血で糖尿病のコントロールの目安がわかる非常に便利な検査です。血糖コントロールが不良な場合には基準値より高くなってきますが、インスリンが効きすぎている場合に健常動物の基準値内に入ってくることも多いので、高いだけでなく低い場合にも注意しなければなりません。
糖尿病動物の血糖値は1日の間でも大きく変動します。採血時に低血糖を起こしていたり、低血糖の症状を起こしたりしていなくても、血糖マーカーが低めに出る場合には血糖曲線を描いてチェックするようにしましょう。
獣医師O
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