【日本獣医生命科学大学 左向教授】糖尿病の症状

 イヌとネコの糖尿病の症状

糖尿病の典型的症状は多飲・多尿です。
これは血糖値がブドウ糖の腎閾値を超えると尿糖として出現し、浸透圧利尿を引き起こすことで生じます。

特に腎閾値の2倍を超えると(イヌで360mg/dL、ネコで450mg/dL)、臨床症状は明確になります。

図1.糖尿病の発症機序(イヌ)
よくわかる生理学の基礎 カラー図解/アガメムノン・デスポプロス/ステファン・シルバーナグル(メディカル・サイエンス・インターナショナル)より引用

多尿のために体内の水分が減少し(脱水)、その緩和のために水分補給を求め多飲が引き起こされます。
夜中のトイレ回数の上昇、尿排泄時間の増加、尿量増加によりオーナーが発見することも多くあります。
飲水は代償作用であるため飲水制限は禁忌です。
飲水制限により、脱水、腎前性腎不全、虚脱、昏睡を引き起こすことがあるので注意が必要です。

表1.イヌ、ネコの糖尿病の症状

症状の機序とは??

食欲亢進は、細胞内低血糖、細胞内飢餓により引き起こされます。
インスリン作用の低下により細胞内への糖輸送ができず、細胞内のエネルギーが
不足します。
また、インスリン不足により満腹中枢への摂食抑制が働かない状態となります。

糖尿病の初期にはインスリン分泌が過剰になっていることが多く、そのために肥満気味となります。
ネコの多くの糖尿病、イヌの黄体期発症糖尿病の初期には肥満気味となります。
しかし、糖尿病が進行し、インスリン分泌が減少または枯渇すると体脂肪の維持が出来ずに体重減少、削痩を示します。

糖尿病では体液および尿中のブドウ糖値が上昇しており、細菌の生殖しやすい環境にあります。
また、生体側の白血球および免疫の低下が知られており、膀胱炎、外耳道炎、歯周病などが起こりやすい状態になります。

糖尿病が進行しエネルギー源として体脂肪の利用を開始すると、エネルギー源としてのケトン体が産生されます。ケトン体が過剰になるとアシドーシス、元気消失、嘔吐、昏睡を引き起こします。

ネコの場合は、体脂肪から肝臓に運ばれて遊離脂肪酸の量が多いと脂肪肝(肝リピドーシス)を引き起こし、重度な肝障害症状を示します。

高血糖が続くとβ細胞からのインスリン分泌を低下させ、さらにインスリン抵抗性を増悪し高血糖を増悪させることが知られています。この悪循環を糖毒性といいます。

併発症(慢性合併症)としては、ヒトで網膜症、腎症、神経障害が3大合併症として知られています。
イヌやネコではこれらの合併症は明確になっていませんが、イヌでは白内障、ネコでは神経症が認められています。
イヌにおける白内障については発症機序がヒトと類似していると考えられますが、ネコの神経症とヒトの神経障害と機序は異なると考えられています。
合併症の機序はポリオール代謝経路異常とタンパク質の糖化が関連すると考えられています。

本件については、後日解説いたします。

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