プロジンクは国内唯一の動物用インスリン製剤です。もともとはネコ用のインスリン製剤として発売され、後にイヌでも使用できるようになりました。イヌでは1日1回の投与で血糖値をコントロールできる症例もあることで、非常に使いやすいというメリットがあります。しかしながら、プロジンクではなかなか血糖値のコントロールが難しい症例もいます。
(※2020年8月時点ではプロジンクは長期欠品のため使用できません。最新の製品の供給状況については販売会社へご確認ください。)
今回はイヌとネコの糖尿病に使用される、プロジンク以外のインスリンの選択方法を解説します。ちなみに、日本で発売されているインスリン製剤については「インスリン製剤の種類と特徴~AAHAの糖尿病治療ガイドライン2018から」で解説されているため、そちらをご覧ください。
どのインスリン製剤を使用すべきか
プロジンク以外のインスリン製剤としては、イヌではノボリンやヒューマリンといったNPH製剤、ネコではグラルギンやデテミルを使用している獣医師が多いようです。使用する基準は、何よりも獣医師が「使い慣れた」製剤であるということです。使い慣れているということは、その製剤のメリット・デメリットを熟知しているということであり、これは医療事故を防ぐためにも大事なことです。また、インスリン製剤によって効果に個体差があるため、第一選択として選んだ製剤での血糖コントロールが難しいようであれば、他の製剤に変更した方がいいでしょう。
インスリン製剤変更時の注意点
基本的に長時間作用型のインスリン製剤を使用し、投与回数は1日2回という点は変わりません。ほとんどの製剤で用量は今までと同じで問題ありませんが、デテミルに変更する際は注意が必要です。デテミルは他の製剤と比べると単位あたりの血糖降下作用が強いため、イヌでは投与量を50~75%程度、ネコでは50%程度減量して投与を開始した方がいいとされています。そのため、デテミルを敬遠する獣医師も多いのですが、他の製剤と異なり、デテミルは希釈が可能なため、個人的には調整しやすいというメリットがあると感じています。
効果判定のポイント
インスリン治療の開始時や製剤の変更時は、あまり血糖値が下がらなかったり、持続時間が短いことがあります。しかしながら、同じ量で数日注射し続けていくことで、徐々に作用が安定化して血糖値もしっかり下がり、作用時間も長くなることがあります。効果が不十分だと感じてもすぐにインスリンの投与量を増やすのではなく、数日ごとに血糖値の変化を確認しながら投与量を決めるようにしましょう。
獣医師K
会員ページでは、糖尿病に関する各種資料をダウンロードいただけます。ぜひアクセスください!