猫特発性膀胱炎は、猫下部尿路疾患の多くの割合を占めており、その他の猫下部尿路疾患と同様に頻尿や血尿、排尿痛などの症状を引き起こします。猫特発性膀胱炎の原因はいまだはっきりとはわかっていませんが、代謝異常や神経性の異常、ストレスなどが関与していると考えられています。
猫特発性膀胱炎の診断は、そのほかの疾患を除外することによって実施されます。臨床徴候・身体所見・画像検査・尿検査などから、尿石症・尿路感染症・尿路閉塞・神経障害・外傷・腫瘍などを精査して除外する必要があります。
猫特発性膀胱炎の診断1)
猫特発性膀胱炎の病態に明確な定義はなく、特発性膀胱炎には感度と特異度の高い検査が存在しません。そのため、そのほかの疾患を除外して診断することが必要です。
行動
マーキングやトイレの問題を除外する必要があります。特発性膀胱炎ではストレスや痛みにより排尿時に鳴いたり排尿後に過剰にグルーミングしたりすることがあります。これらの行動は一度落ち着いても繰り返すことが多いです。
身体検査
腹部の触診を行い、膀胱の大きさや質感、内容物をおおまかに確認します。
画像検査
X線検査により尿路結石の確認を行います。造影X線検査では小さな病変や放射線透過性の結石、新生物、尿道狭窄、尿道憩室などを確認するのに有効です。
腹部超音波検査では尿路結石や結晶、膀胱腫瘍、膀胱壁の厚みの確認に役立ちます。尿道内視鏡検査は尿路病変や結石、腫瘤、狭窄などを視覚的に評価することができます。
血液検査
特発性膀胱炎ではほとんどの場合正常もしくは基準値からの軽度な逸脱であり、特異的な所見はありません。
尿検査
尿沈渣の分析と細菌培養検査が推奨されます。尿pHや尿比重、尿沈渣中の上皮細胞数には特発性膀胱炎とそのほかの下部尿路疾患で有意な差は認められません。
尿検体は無菌的に採取する必要があり、特発性膀胱炎では細菌尿は認められません。特発性膀胱炎のネコでは、尿検査で血尿や蛋白尿が確認されることが多いでしょう。尿沈渣を顕微鏡で確認する際には、結晶や脂質滴などがブラウン運動をすることで細菌と誤認されることがあるため、注意が必要です。
まとめ
猫特発性膀胱炎の診断に有効な特異的な検査やバイオマーカーはまだありません。特発性膀胱炎の診断は臨床徴候・身体検査・画像診断・尿検査などから除外診断が基本になり、複数の検査を行って診断することが重要です。
<参考>
1) Chengxi He, Kai Fan, Zhihui Hao, Na Tang, Gebin Li* and Shuaiyu Wang. Prevalence, Risk Factors, Pathophysiology, Potential Biomarkers and Management of Feline Idiopathic Cystitis: An Update Review. Front Vet Sci. 2022, volume 9
獣医師Y