SDMAの活用と腎疾患の早期診断

SDMA(対称性ジメチルアルギニン)は、従来のクレアチニンにくらべ、より早期に腎機能の低下を検出できるとされており、近年の研究でもその有用性が報告されています。慢性腎臓病(CKD)は、イヌやネコにおいて高齢化とともに増加する疾患のひとつです。本記事では、最新の研究をもとに、腎疾患の診断におけるSDMAの活用方法について解説します。

SDMAとは

SDMAとは、腎機能を評価するためのバイオマーカーです。 クレアチニンとは異なり、筋肉量の影響を受けにくいため、高齢動物や筋肉量が減少した動物でも正確に腎機能を評価できると考えられています。

SDMAの臨床応用(最新の研究より)

SDMAは、クレアチニンよりも数か月から1年以上早く腎機能の低下を示すことが報告されています。ある研究では、クレアチニンが正常範囲にあるイヌの約40%で、SDMAが上昇していたことが確認されました。

このことからSDMAは、「クレアチニンでは検出できない初期段階の腎機能低下」を把握できると考えられます。近年の研究では、クレアチニンとSDMAの併用によって、より正確な腎機能評価が可能になると報告されました。

また、IRISのガイドラインでは、CKDの早期診断に「SDMAの上昇を活用すること」が推奨されています。SDMAが持続的に上昇している場合、追加の検査(尿検査、画像診断など)を行い、腎疾患の有無を評価することが求められるでしょう。

SDMA測定の実際

SDMAは、一般的な血液検査と同様に血清サンプルを用いて測定されます。現在、動物病院向けの一般的な測定機器として、「IDEXX Catalyst SDMAテスト」や「Vcheck V200 」などが利用可能です。

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健康なイヌ・ネコのSDMAの基準値は14 μg/dL以下です。持続的な上昇が認められる場合、腎疾患の早期診断や追加検査の検討が推奨されます。

SDMAは筋肉量に依存しないため、クレアチニンと異なり、やせた個体でも腎機能評価が可能です。進行性腎疾患が疑われる場合は、SDMA値の経時的変化を追うことで、疾患の進行を評価できます。

まとめ

従来のクレアチニンや、尿比重のみでは検出できなかった早期腎障害をSDMAで捉えることができれば、食事療法・血圧管理・リン制限などの介入を早期に開始できる可能性があります。

これにより、疾患の進行遅延や動物のQOL(生活の質)維持も期待できるでしょう。

加えて、院内でSDMAを測定できる機器を導入することで迅速に結果を得ることができます。

SDMAを活用すれば、腎疾患の早期発見や適切な管理に繋げることができ、より良い治療計画を立てることができるでしょう。

獣医師A

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【参考文献】
1)Nabity, M. B., et al. (2015). “Symmetric Dimethylarginine Assay for Estimating Glomerular Filtration Rate in Dogs and Cats.” J Vet Intern Med. 29(3): 808–814.
2)Hall, J. A., et al. (2014). “Serum concentrations of symmetric dimethylarginine and creatinine in dogs with naturally occurring chronic kidney disease.” J Vet Intern Med. 28(6): 1557–1563.