イヌの褐色細胞腫とスポット尿中ノルメタネフリン/クレアチニン比について

日常の診察時に画像診断が頻繁に行われるようになった現在、無症状の偶発的副腎腫瘍に遭遇するケースが増えています。
イヌの褐色細胞腫(pheochromocytoma, PCC)は、非常にまれな腫瘍ですが、クッシング症候群などと鑑別することは重要です。

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褐色細胞腫は副腎髄質由来のカテコールアミン産生腫瘍であり、診断が難しい腫瘍として知られています。
その診断に近年注目されているのが スポット尿中ノルメタネフリン/クレアチニン比です。
本記事では、その有用性を報告する論文を紹介します。

High specificity and sensitivity of spot urine normetanephrine-to-creatinine ratios in the diagnosis of canine pheochromocytoma

研究の概要

副腎腫瘍を持ち、副腎摘出術を行った32頭(非褐色細胞腫13頭、褐色細胞腫19頭)のイヌの回顧的研究です。
イヌの褐色細胞腫を診断するための尿中メタネフリン/クレアチニン比と、尿中ノルメタネフリン/クレアチニン比の特異度・感度および予測値を評価し、尿カテコールアミン濃度と腫瘍体積の間に相関があるかどうかを確認しました。

結果

1.褐色細胞腫のイヌでは、他の副腎腫瘍のイヌと比較して、スポット尿中ノルメタネフリン濃度が有意に高いという結果になりました。

2. ノルメタネフリンの方が、メタネフリンより褐色細胞腫を診断するのには優れていました。

3.褐色細胞腫の診断に用いられるスポット尿中メタネフリンの上限基準値の4倍というルールを適用すると、相当数の診断の見逃しにつながるということがわかりました。

4. 腫瘍容積が大きいことは、尿中のメタネフリンまたはノルメタネフリンの濃度が高いこととは相関していませんでした。

5. 尿中メタネフリンまたはノルメタネフリン値の上昇は血管浸潤の予測因子ではありませんでした。

6. 腫瘍容積と尿中メタネフリンまたはノルメタネフリン値の上昇は、周術期合併症を予測するものではありませんでした。

7. 症例の21%は生化学的に無症状(=尿中メタネフリンが正常値)の褐色細胞腫でした。

考察

・スポット尿中ノルメタネフリン/クレアチニン比は、褐色細胞腫と非褐色細胞腫を鑑別するのに適した検査です。

・基準値上限の4倍というガイドラインに従うのではなく、スポット尿中ノルメタネフリン/クレアチニン比が上限基準値を超えたら、褐色細胞腫を疑うことが重要です。

・イヌの褐色細胞腫において、生化学的に無症状の症例は珍しくはありません。(ヒトでは稀)

・腫瘍の大きさだけでは、褐色細胞腫の診断を疑うのは難しいと考えられます。

・褐色細胞腫の場合、摘出手術を困難にする要因は周術期の大量のカテコールアミンの放出です。
ノルメタネフリン値が上限基準値を超える場合はもちろんのこと、腫瘍容積が小さな腫瘍でも、ノルメタネフリンが正常であっても、褐色細胞腫を完全に否定することができません。
腫瘍の取り扱いに関しては、注意が不可欠であり、α遮断薬(フェノキシベンザミン)などの準備が必要になる場合もあります。

まとめ

イヌの副腎腫瘍に遭遇した際や、褐色細胞腫を疑う症状のある症例には、スポット尿中ノルメタネフリン/クレアチニン比は、診断を助ける有効な検査であることが示唆されています。

獣医師Y

【参考文献】
High specificity and sensitivity of spot urine normetanephrine-to-creatinine ratios in the diagnosis of canine pheochromocytoma
JAVMA | MARCH 2025 | VOL 263 | NO. 3

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