自分のネコが糖尿病と聞くと、飼い主さまの多くはそれだけで不安になってしまうものです。また治療が長期に及ぶことも少なくないため、飼い主さまには技術面だけでなく精神面にも配慮した、インスリン投与の説明が必要になると思います。これは治療の離脱を防ぐためにも重要なポイントとなるでしょう。そこで今回は、糖尿病を患うネコの飼い主さまに対して、どのように病気のことやインスリンの打ち方などを説明するのが良いか、何を重点的に話すと良いかについてご紹介したいと思います。
糖尿病のネコの飼い主さまへの病気の説明のコツ
ネコの糖尿病は、ヒトやイヌとは違う特徴がありますよね。また「とりあえずインスリンを打っておけば安心」と思っている人もいるため、飼い主さまにはネコの糖尿病に関する正しい知識とインスリン投与の注意点について知ってもらうことが大切です。
適正体重に近づけることの必要性も示唆する
ネコが肥満気味の場合、インスリンによる治療に合わせて、適正体重を目指すための指導も必要かと思います。しかし飼い主さまの中には、「インスリンを打つだけで精一杯」、「食事を制限するのはかわいそう」と思っている人も少なくないため、なぜ適正体重を目指す必要があるのかについても説明しておくのが良いでしょう。
治療にかかる費用について
糖尿病治療で気になることのひとつとして、よく挙げられるのが費用です。特にインスリンが必要な場合、継続的に割高な治療費がかかることになります。さらに肥満が疑われる場合などは、合わせて療法食を用いることも多いもの。そのため、かなりの費用がかかることになります。
しかし、正しい治療を継続することで、インスリンの量を減らしたり、なくしたりすることができますし、糖尿病の治療は合併症の予防にもつながります。「費用はかかるものの、正しく治療を継続することで、経済的負担が減る可能性もある、何より愛猫のためにもなる」ということを伝えておくと良いと思います。
糖尿病のネコへのインスリンの打ち方で飼い主さまが気になること
飼い主さまのほとんどは、インスリン治療はもちろん、愛猫に注射するという行為自体も未経験であることが多いものですよね。そのため、知らず知らずのうちに間違った打ち方をしてしまう可能性もあります。正しい治療を行うためにも、飼い主さまの多くが気になる「インスリンの打ち方に関する注意点やポイント」についてご紹介します。
インスリンを打つ場所や方法
飼い主さまが不安に感じる内容として多いのが、「ちゃんと注射できるか」という点です。
できれば最初は丁寧にインスリンを打つ場所や方法について説明してあげましょう。冊子などを作るとより丁寧です。また、どうしても自分でインスリンを打つのが怖い場合や、自信を持てるまで時間がかかるという場合は、動物病院に通ってもらうのもひとつの方法です。
飼い主さまはもちろん、ネコにできるだけストレスを与えないためにも、しっかりフォローしてあげると良いと思います。
インスリンを打つタイミングについて
インスリンを打つタイミングや時間間隔を間違えると、低血糖の症状が出る可能性があり、ネコを命の危険にさらしてしまうことはご存知のとおりです。しかし、多くの飼い主さまはそのことを知りません。
特に仕事などで長時間家を空けることの多い飼い主さまの場合、正しい知識を持っていないと、自分の生活に合わせてインスリンを打ってしまいがちになります。
低血糖の危険や正しいタイミングについてしっかりアドバイスをしてあげましょう。
併せて、低血糖の代表的な症状や、速やかに動物病院に連絡することもアドバイスしておくと安心していただけると思います。
自己判断でインスリン投与をやめない
飼い主さまによっては血糖値やネコの状態を見て、勝手にインスリン投与をやめてしまう人もいます。インスリン投与を自己判断でやめてしまうことは非常に危険であることを伝えておきましょう。
長い間インスリンが打てない場合の対処法
仕事や出張などで長時間家を空けることが多かったり、ネコを一人にさせることが多かったりする飼い主さまの場合、その間どのように対応すればいいか迷うことも多いものです。こうした際には自己判断せずに、まずは動物病院に相談するよう伝えておくと、飼い主さまは安心できるでしょう。
糖尿病のネコの治療にどれくらい時間がかかるかを上手に説明する方法
愛猫が糖尿病と言われた場合、飼い主さまが気になることのひとつに「治療期間」が挙げられます。
糖尿病は「治療に時間がかかる」、「一生治らない」という負のイメージを持たれがちな病気です。そのため愛猫が糖尿病と告知されただけで心が折れてしまう人も。
また、とても残念なことではありますが、ネコを手放そうとする人も出てくるかもしれません。悲しい結果を招かないためにも、治療期間を正しく上手に説明することが求められます。
正しい知識とともに寛解の可能性も伝える
糖尿病は完治することはほぼないと言われる病気です。そのため一生付き合っていく必要があるということは事前に伝えておく必要があるでしょう。
ただし、治療や経過によってはインスリンの量が減ったり、寛解したりすることがあるのも事実です。
その点を伝えた上で、「動物病院としてもできる限りサポートするので、諦めずに愛猫のために治療を行いましょう」と飼い主さまの精神面に配慮した言葉をかけてあげると良いと思います。
まとめ
糖尿病と診断されたネコの飼い主さまの多くは、混乱したり不安に陥ったりするものです。
かかりつけ医の先生方はその点を配慮した上で、飼い主さまやネコの状態に応じたアドバイスを行うことが大切だと思います。
飼い主さまを支えることは、ネコの健康を支えることにもつながりますので、少しでも本記事がお役に立てたら幸いです。
獣医師H