【日本獣医生命科学大学 宮川先生】腎臓病に関する話題~連載4回目:腎臓病用療法食の意義~

ご好評いただいております、日本獣医生命科学大学 獣医内科学研究室第二 宮川優一先生の連載4回目です。腎臓病に関する様々なお話をお届けしています。

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腎臓病用療法食の意義

現在、獣医療では慢性腎臓病の主要な治療は、腎臓病用療法食の給与になっています。
しかし、腎臓病用療法食は治療薬ではなく、給与していれば腎臓が良くなるわけではありません。
腎臓病用療法食で腎機能は回復しません。
腎臓病用療法食を給与する目的は、栄養素のバランスによって慢性腎臓病で生じる糸球体濾過量の低下の結果として生じる合併症を軽減し、その合併症によって引き起こされる腎臓病の進行を抑制することにあります。

リン制限の効果

腎臓病用療法食はリン制限食であり、リン・カルシウム代謝異常に対する治療管理として意義があります。

国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)が作成したガイドラインでは、食事療法の開始時期はステージ2からとなっています(表1)。
実際には、高リン血症は多くの患者で進行したステージ(3後半~4)で認められていますが、腎性二次性上皮小体機能亢進症は、ステージ2の後半ですでに発症していることがあります(J Vet Intern Med. 2010. 24:73)。そのため、ステージ2から開始すべきであるとされています。


表1.国際獣医腎臓病研究グループ(IRIS)のCKDガイドラインでのリン制限食の治療推奨と
目標とする血清リン濃度(http://www.iris-kidney.com/)

イヌおよびネコで1つずつの無作為化二重盲検試験で、腎臓病用療法食(つまり、低リン食)が患者の延命に有効だったことを確認しています(J Am Vet Med Assoc. 2002;220, 2006;229)。
高リン血症と高カルシウム血症が生じると、リンとカルシウムの結合を招き、軟部組織の石灰化を生じます。それによる血管障害、腎組織の破壊が慢性腎臓病の進行と関連すると思われます。
そのため、高リン血症を改善し、石灰化のリスクを低下させることが慢性腎臓病の進行を遅延させ、生存期間を延ばすことができると思われます。

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ネコの腎疾患の症例”慢性腎臓病の治療経過”