イヌもネコも糖尿病と診断した場合、最初は入院管理を行うことが多くなりますが、ある程度の治療方針ができたらその後は自宅管理が中心となります。治療法としては、食事療法とインスリン投与があり、獣医師はフードの選択やインスリン注射の方法について指導します。また、目に見えないペットの状態を飼い主が把握するための手段として尿検査があり、尿スティックを処方し、自宅で尿糖やケトン体の有無を確認してもらうことは、来院タイミングを逃さないためにも有用です。その他、飼い主とペットの性格や状況にもよりますが、自宅で血糖値の測定が可能な場合もあります。
食事療法の指導
イヌの糖尿病のコントロールのためには、食事療法と適度な運動が重要です。食事に関しては様々なメーカーから糖尿病用の療法食が発売されています。こういったフードは食物繊維が強化されているものが多く、食後の急激な血糖値上昇を抑える働きがあります。
療法食を食べてくれない子には成犬または老犬用のドライフードか缶詰を与えます。半生タイプのフードは糖分が多いため、避けた方が良いでしょう。運動も重要ですが、インスリン投与の前後で激しい運動をすると、低血糖になることがあるため注意が必要です。
ネコは積極的に運動をさせることが難しいため、食事管理が重要です。イヌと同様に糖尿病用の療法食を用いますが、目標は標準体型を維持することになります。筋肉と脂肪はインスリンの主要な標的組織なので、どちらも適度に必要になります。痩せているとインスリンの吸収が悪くなったり、作用時間が短縮したりします。肥満の場合は過剰な脂肪組織のせいでインスリン抵抗性が発現します。
インスリン療法の指導
基本的に糖尿病に罹患した動物はインスリン療法が必要になることが多いです。注射に慣れていない飼い主にとって、インスリン注射は非常に不安でストレスの大きい行為です。そのため、やり方を実践してみせ、その後実際に飼い主にやってみてもらうことで一連の作業を共に確認しながら指導し、抵抗感をできるだけ減らすようにします。また、使用済みの器具の取り扱いについての説明も忘れずにしましょう。注射針は医療廃棄物になるため、次回来院時に病院に持参してもらうように伝えます。
自宅での尿スティックによる状態の把握
尿スティックを処方し、自宅で飼い主にペットの糖尿病の状態を把握してもらうことで、悪化した場合の来院タイミングを逃さないようにすることができます。それだけでなく、飼い主の治療へのモチベーションを維持することもできます。頑張ってインスリンを注射することで尿糖が減ったり検出されなくなったりすると、飼い主は自身の行っている治療の効果を実感し、やり甲斐を感じることができます。
尿スティックを使用するためには尿の採取が必要になりますが、イヌに比べてネコは採尿が難しいことが多いため、採尿方法の指導も必要になります。排尿時にオタマやスポンジ製の採尿器で採る、トイレにビニールシートを敷いてそこに溜まった尿を採る、トイレをシステムトイレにするなどの方法があります。その子その子に合った方法を選択するよう指導します。
まとめ
糖尿病の維持・治療は自宅で行うことが多くなります。質の高い自宅での管理は治療の一環としても必要不可欠です。飼い主とペットの双方ができるだけストレスを感じることなく、治療に臨めるよう、獣医師側も適切なアドバイスができるよう準備をしておきましょう。
獣医師F
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