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副腎皮質機能低下症はアジソン病とも呼ばれる疾患で、内分泌疾患のなかでも比較的若いイヌで発症が認められることが多いとされています。しかしながら、症状に非特異的なものが多く、意識して診察に当たらないと発見が遅れてしまうこともあるのです。この点を踏まえて、今回は副腎皮質機能低下症の診断について解説します。
副腎皮質機能低下症とは
副腎皮質から分泌されるステロイドホルモン不足によって生じる疾患です。イヌでしばしばみられますが、ネコでは極めてまれとされています。自己免疫の問題で特発性に起こるものや、感染症、腫瘍の転移、クッシング症候群の治療薬の作用などで副腎皮質が破壊されることが原因のものがあります。
イヌの場合、特発性の副腎萎縮が多く、約70%の症例では副腎皮質のうち球状帯と束状帯が破壊されるため、ミネラルコルチコイドとグルココルチコイドの両方が不足します。そして、これらの分泌が90%以上障害されると症状が出るようになります。残りの30%は非定型アジソン病と呼ばれるタイプで、グルココルチコイドのみが不足します。
臨床症状
好発犬種はなく、症状も非特異的です。
グルココルチコイドとミネラルコルチコイドが不足することにより、虚弱、体重減少、食欲不振、嘔吐、吐出、下痢、徐脈、低体温、震え、けいれんなどがみられます。特発性の場合、副腎の萎縮は時間をかけて進行するため、臨床症状も良くなったり悪くなったりを繰り返しながらゆっくり進行します。
ストレスがかかる状況ではコルチゾールが不足するため、症状が現れやすくなります。
血液検査
CBCでは軽度の非再生性貧血や好酸球増多が認められることがありますが、他に特徴的な変化がみられることはありません。
血液化学検査でもっとも特徴的なのは、電解質です。低ナトリウム血症と高カリウム血症が認められれば、副腎皮質機能低下症の疑いが強くなります。しかし、両方とも認められるのは症例の80%程度とされ、10%はどちらか一方のみ、10%は電解質異常は認められません。
他には循環血液量が減少することによりBUNが上昇することがあります。そしてグルココルチコイドが不足することで低血糖が認められることもあるので注意が必要です。高カルシウム血症が認められることもあります。
まとめ
臨床症状を認める副腎皮質機能低下症のイヌを診断する際、血液検査で特徴的な所見が得られれば、ACTH刺激試験を行って確定診断を出すことは比較的容易ですが、非定型の場合は異常所見がみられないこともあるため、鑑別診断リストに入れていないと診断がかなり難しくなります。
そのため、比較的若いイヌで育ちが悪いとか、体調の波がある、ストレスがかかると体調を崩しやすいといった特徴がある場合は、副腎皮質機能低下症を鑑別診断リストに加えるべきでしょう。
獣医師E