見た目が小さく、リスに似ていることから命名されたリスザル。通常は動物園で見かけることがほとんどですが、サルの仲間の中では比較的慣れ易く、実際にペットとして飼育されている方もいらっしゃいます。サルの食べるご飯として最初に思い浮かべるものはバナナかもしれませんが、実際はこういった果物を中心とした糖分の多い食餌を継続的に与えると、糖尿病のリスクが高まってしまいます。今回は、糖尿病リスクを高める食生活の注意点と、糖尿病を疑う上で重要となる尿検査について解説します。
糖尿病リスクを高める食生活の注意点
バナナなどの果物はリスザルの好物であり最初に食べる傾向にありますが、そればかり与えると糖尿病のリスクを高めてしまいます。また、糖分の多い食餌は齲蝕や歯周病のリスクも高くなることがわかっており、糖尿病のサルでは歯周病が合併症として見られる傾向にあったことが報告されています。実験動物のサル用フードを参考にすると、スローロリスなどの旧世界ザル用では果物や野菜を中心とした食餌内容である種が多いためかタンパク含有量は15%以上とされているのに対し、リスザルなど新世界ザル用フードのタンパク含有量は25%以上であり、動物性タンパク質の要求量が多くなっています。こういったことからも、リスザルへの果物の多給は推奨されず、昆虫やモンキーフードを中心とした動物性タンパク質を多く含む食餌内容にすることが推奨されるのです。
尿検査の重要性
糖尿病の診断に必要な検査として、血液検査と尿検査があります。リスザルからの採血は、鎮静下以外で行うのは困難であることが多いのに対し、尿検査なら自然排尿による尿の採取が可能です。飼い主さん、獣医師、リスザルいずれにおいても負担の少ない検査です。リスザルはトイレを覚えないので、あちこちに排尿しますが、糖尿病になると多尿を呈することからケージ内の床に落ちた尿でも充分量を採取可能です。糖尿病では尿糖陽性を示し、治療をしないとケトン陽性に移行していきます。
まとめ
リスザルの糖尿病治療は、イヌやネコのようにおとなしく注射をさせてくれないのでインスリン療法は困難です。また、リスザルの耐糖能の研究では、限られた空間での長期にわたる実験によるストレスが糖尿病の発生の背景にあると報告されています。これらのことから、適切な食餌と充分な運動はもちろん、リスザルにとってストレスの少ない環境で生活し、予防に徹することが何よりも重要だと言えるでしょう。
獣医師S