パートナーと認めた対象に対しては、かなり一途で「とことん一緒にくっついていたい」と意思表示をしてくれるコザクラインコ。それ故に、セキセイインコのように言葉を覚えるのは得意ではないにもかかわらず、現在も変わらない人気を博しており、鳥類としてはセキセイインコに次いで診療で遭遇する機会が多くなっています。ただし、パートナーを獲得し発情期を迎えた場合、かなり頻繁に卵を産んでしまうことがあるため、結果として低カルシウム状態となり、卵詰まりなどのトラブルに発展する可能性があります。今回は、このカルシウム代謝に関係する日光浴に関して、その必要性と正しい日光浴の方法を飼い主さまへお伝えするポイントを解説していきます。
日光浴の必要性
カルシウムの働きを調整するのに重要な役割を持っているのがビタミンDで、紫外線を浴びることで体内で合成することができます。日光浴が十分にできないと不足しがちになり、さまざまな疾患を引き起こす可能性が高まります。
(ヒトにおける最近のトピックスで、コロナ禍の医療従事者でビタミンD欠乏が顕著であるとの発表がありました。http://www.ncchd.go.jp/press/2022/220311.html 日光浴はヒトでも重要です。)
コザクラインコに限らずですが、鳥において日光浴の必要性を強く示唆するイベントが2つあります。それは、成長期と雌の発情期です。いずれも共通していえるのは、カルシウムの要求量が急激に増える時期にあるということです。前者は雄雌共通して起こり、成長に伴い骨格の材料であるカルシウムが必要となります。十分な供給ができないと、骨が変形する「くる病」になってしまいます。それに対して後者は雌にのみ起こり、卵の材料としてのカルシウムが必要となります。十分な供給ができないと低カルシウム血症となり、卵詰まりや虚脱、痙攣を起こし、最悪の場合亡くなってしまうこともあります。
正しい日光浴の方法
では、正しい日光浴の方法はどのようなものでしょうか。現在のところ、科学的な裏付けがある日光浴の方法はありませんが、経験的に推奨される日光浴の方法として次の2つを提案しています。
1.太陽光による日光浴
自然な条件に近い日光浴を再現することができ、一番推奨される方法だといえるでしょう。この場合、窓越しでの日光浴ではカルシウム代謝に関係するUVBが遮断されるため注意が必要です。また、外に出して日光浴を行う場合は、カラスなど外敵に襲われる事故も報告されているため、飼い主さまへの注意喚起も必要です。
2.人工の紫外線ライトによる日光浴
専用の紫外線ライトが市販されているので、生体から30~40cmの距離に設置して行います。
いずれの方法も、1日に30分程度が推奨されます。
まとめ
ボレー粉やカトルボーンなど、普段からカルシウムの摂取に関して意識されている飼い主さまは比較的多くいらっしゃいます。しかしながら、そのカルシウムが吸収されるメカニズムまでご存知の方は少ないのが現状です。病気になってからの治療より、正しい日光浴の必要性と方法をお伝えし、予防に努めることこそ私たち獣医に求められていることなのかもしれません。
獣医師U