医療現場において、健康診断などの際に尿検査を実施する場合は、人間ならその場で「自分」で採尿し、それを検体として検査を実施します。しかし、イヌやネコの場合はそんなことはできません。膀胱穿刺など動物病院で採尿する以外は、飼い主さまが自宅で採尿して動物病院まで持参していただきます。そのプロセスにおいて、具体的には採尿方法や保存方法に関して、先生方はどのような指導をされていらっしゃるでしょうか。もし全く指導していないのであれば、「誤診」に繋がる可能性のある方法で提出された尿を検査してしまっていることがあるかもしれません。今回は、誤診を予防するための尿検査の予備知識についてお伝えしていきます。
適切な採尿方法
自宅で採尿してもらう方法としては、イヌではペットシーツを裏返しビニール面にしたものを採尿してもらう方法、散歩で排尿姿勢をとった時に食品トレーなどを利用し、地面に接触する前に採尿する方法などがあります。食品トレーを使用する場合は、十分に洗ってから使用しないと、食品によっては糖分がトレーに残っていることがあり、誤って尿糖が陽性となってしまうことがあるので注意が必要です。
ネコの場合、普段使用している猫砂が入っているトイレの下にある受け皿をきれいにしておき、猫砂で吸収されなかった分を採尿する方法があります。事前に猫砂の量を少なくする指導をしておくと採尿量が多くなります。糞便による汚染がないように採尿時にはトイレはきれいにしておくことが大切です。
適切な保存方法
すぐに動物病院に検体を持って来られない場合、飼い主さまには以下のような保存方法を指導すると良いでしょう。
採尿後、2-3時間で持って来られる場合は、冷暗所にて保存してもらいます。それ以上かかる場合は、冷蔵庫で保管してもらい、その日のうちに動物病院に持ってきてもらいましょう。飼い主さまから検体を受け取るときには、どういった方法で採尿したものか、採尿後どのくらいの時間が経過しているか、どのように保管していたかを必ず確認します。
尿を常温で保管しておくと、雑菌が増殖してしまいますし、検査エラーが起こってしまうかもしれません。
また、冷蔵庫で保管した場合は、冷却によって尿成分が結晶化し、生体内にあったときにはなかったものを検出して誤診につながるリスクもあるので、常温に戻してから検査を行いましょう。
まとめ
採尿後すぐに尿検査するのがベストであることはいうまでもありませんが、実際問題、動物の場合はそういう訳にはいかないことが多いというのが、臨床現場の先生方の認識ではないでしょうか。大変な思いをして採尿される飼い主さまも少なくありません。愛犬愛猫のためのその頑張りが適切な診断につながるよう、ましてや誤診にはならないように、確認と指導をしていくことも意識していきましょう。
獣医師C
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