イヌのビリルビン尿を検査する際の注意点

肝・胆道系疾患や溶血性疾患では、血清ビリルビンが増加し、黄疸が見られることがあります。おそらく、多くの先生は血液検査でビリルビンの濃度を測定していると思いますが、実は、黄疸の検出感度は肉眼所見よりも、そして血清ビリルビン濃度よりも、尿中ビリルビンが一番高いことをご存じでしょうか?今回は、尿検査で軽んじられてしまいがちなイヌのビリルビン尿に関して、検査の注意点と結果の解釈をお伝えしていきます。

検査の注意点

尿試験紙では尿比重の影響を受けるため、1.020以上の場合は正常であってもビリルビンが少量検出されてしまうことがあります。これは、イヌの腎臓はビリルビンの閾値が低いことや、腎臓でもビリルビンを産生することが理由です。また、ヘモグロビン血症では尿細管でヘモグロビンがビリルビンへと生成され、偽陽性となることがあります。それに対して、アスコルビン酸の服用や、採取から時間が経過したサンプル、紫外線の曝露では偽陰性となることがあるのです。

結果の解釈

尿比重が1.020以上に濃縮された尿で3+以上の有意な陽性のビリルビンが見られた時は、第一に肝・胆嚢系疾患が疑われます。その場合は追加で肝機能の検査を行う必要があります。他にも、溶血性疾患の可能性も示唆されるため、CBCやクームス試験などを追加で行い、確認すると良いでしょう。

まとめ

適切な尿サンプルの扱い、及び適切な検査を行っても予想外の結果が出てしまうことがあるかもしれません。例えば、尿ビリルビンが陽性であるにもかかわらず血清ビリルビンが正常範囲といった場合です。

今回ご紹介した検査の注意点をよく理解することで、そのビリルビン尿が正常なのか、溶血性疾患なのか、肝・胆道系疾患なのかより深く考えられるようになるでしょう。

尿中のビリルビンはそれ単独で診断につながるというよりも、それ以外の検査と合わせて総合的に判断する項目です。検査結果を正しく理解するためには、その検査の定義や、検査の限界をよく知っておくことも必要になってきます。そして何より、その検査がどういった症例でより最短で診断につながるのかを判断する知識も、獣医師にとっては必要な技術の一つではないでしょうか。

獣医師U

岩手大学 名誉教授 佐藤れえ子先生に執筆いただいた「尿検査の意義~尿蛋白の解釈について」でも尿検査の重要性を解説いただいています(全文を購読するには会員登録が必要です)。