コザクラインコの甲状腺機能低下症とその治療について

イヌでも、比較的よく遭遇する疾患「甲状腺機能低下症」は、鳥においても注目すべき疾患のひとつです。
特にコザクラインコは、この病気の影響を受けやすいとされています。
そこで本記事では、甲状腺機能低下症についての基礎知識とその診断、および治療をご紹介します。

甲状腺機能低下症とは

甲状腺機能低下症は、甲状腺ホルモンの分泌が低下することで代謝機能が抑制される病気です。
コザクラインコでは、甲状腺ホルモンは脂質代謝と羽毛の発育に関わってきます。
症状としては体重増加、活動性の低下、脂肪肝、消化機能低下などに加えて、綿羽の過長や羽毛の変色が見られます。

特にコザクラインコでは、レッドフェザーと呼ばれる羽毛が赤くなる症状が特徴的です。
鳥の甲状腺機能低下症の原因ははっきりとはわかっていませんが、栄養不足や慢性炎症性疾患などが原因ではないかと考えられています。

治療

コザクラインコにおける甲状腺機能低下症の治療としては、ヨウ素含有のバランスの取れた食餌への改善を行うとともに、レボチロキシンナトリウムなどの経口投与が推奨されています。
食餌の改善では、ペレットへの切り替えやシード食でのビタミン剤の追加などがあげられます。

症状として、肥満が重度である場合は、食事制限や適度な運動指導も効果的です。
加えて脂肪肝による肝機能障害が見られる場合は、肝庇護剤などの併用による治療も必要になります。

鳥の場合、甲状腺ホルモンの測定が難しいため、治療によって症状が改善すれば甲状腺機能低下症であるという、診断的治療になります。
羽毛の症状は換羽のタイミングでしか改善が見られないため、症状の改善までは数か月から1年以上と、治療期間が長期にわたることも少なくありません。

まとめ

コザクラインコの甲状腺機能低下症は、明らかな不調が目に見えてわかりづらいため、飼い主さまが治療の継続をやめてしまいがちです。
しかし甲状腺機能低下症になると、肥満による肝不全や糖尿病を併発する可能性もあるため、適切な治療と生活指導を継続していくことが重要です。

鳥の場合、肝不全や糖尿病になってしまうと命に関わってきます。
コザクラインコの寿命は、適切にお世話できているかによって大きく変わります。
飼い主さまには治療が長期になる可能性や継続の重要性をご理解いただき、共に治療に取り組んでいきましょう。

獣医師K

【参考文献】
・Avian Veterinary Handbook. “Thyroid Hypofunction in Birds” (2024).
・Clinical Avian Medicine. “Endocrine Disorders in Psittacines” (3rd Edition).

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