臨床で知っておきたい「リキッドバイオプシー」:小動物の腫瘍診療最前線

リキッドバイオプシーは、血液などの体液を用いて腫瘍由来の物質を検出・解析する診断技術です。
従来の組織生検と比べて侵襲が少なく、繰り返し評価できる点から、ヒトの医療で急速に普及し、伴侶動物医療でも注目が高まっています。

対象となる腫瘍由来バイオマーカー

腫瘍診断で評価される主なバイオマーカーは以下の通りです。
・cfDNA(cell-free DNA):血液中に存在する細胞外遊離DNAの総称
・ctDNA(circulating tumor DNA):腫瘍由来のDNA断片で、cfDNAの一部
・miRNA(microRNA):腫瘍で特徴的な発現変化を示す小さなRNA分子
・EV(細胞外小胞)/エクソソーム:腫瘍細胞が放出する膜小胞
・CTC(循環腫瘍細胞):血中に流入した腫瘍細胞

特にイヌでは、循環miRNAは比較的安定して検出可能で、臨床応用が進んでいます。
本記事では、循環miRNAによるリキッドバイオプシーにフォーカスして紹介します。

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0.5 mLの血液でイヌのがんリスク検査

myRNA DOGs(マイルナドッグズ)
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リキッドバイオプシーの特徴

リキッドバイオプシーには、従来の画像診断や組織生検を補完する以下の利点があります。

・低侵襲:採血のみで評価可能です。

・腫瘍の全体像を反映:複数の腫瘍病変に由来する遺伝子変化を捉えられる可能性があります。

・経時的モニタリングが容易:治療効果や再発を連続的に追跡できます。

・微小残存病変(MRD:Minimal Residual Disease)の検出:画像診断では捉えられない腫瘍の残存や再発を評価できる可能性があります。

臨床での使いどころ

① 早期スクリーニング

腫瘍は初期段階では画像診断での検出が難しい場合がありますが、miRNAは腫瘍形成の早期から変化するため、画像診断より早く異常を捉える可能性があります。

② 治療後の再発(MRD)モニタリング

外科切除後や化学療法後に、画像上は病変を認めない場合でも微量の腫瘍細胞が残存していることがあります。
リキッドバイオプシーは、MRDを早期に検出し、再発の数週間〜数カ月前に異常を捉えることができる可能性があります。

③ 生検が難しい部位の補助的診断

脳腫瘍・縦隔腫瘍・深部骨腫瘍など、生検が困難または侵襲リスクの高い部位では、補助的診断として有用です。
ただし、現時点では組織診断を置き換えるものではなく、細胞診・組織生検・画像診断との併用が不可欠です。

課題

① 原発部位の特定が難しい

血中に検出される分子は腫瘍由来であっても、どの臓器の腫瘍かを特定することは困難です。
複数の腫瘍で共通して上昇するmiRNAも多く、臓器特異性の低さが課題となります。

② 感度・特異度の限界

・偽陽性:炎症性疾患や組織損傷でもmiRNAが変動します。
・偽陰性:腫瘍の組織型や増殖速度、サイズによっては血中への放出が少ない場合があります。

そのため、単独で確定診断に用いるのではなく、総合診断の一要素として位置づける必要があります。
2025年の総説でも、臨床応用の可能性が示される一方、試料処理・解析方法の標準化が今後の課題とされています。

まとめ

今後は、ctDNA解析やエクソソーム解析などの技術の導入がさらに進むことで、小動物腫瘍診療におけるリキッドバイオプシーの役割はますます拡大すると考えられます。

獣医師H

【参考文献】

1. 池田凡子ら.犬のがん早期診断のためのリキッドバイオプシー―いまとこれから―.小動物腫瘍臨床 Joncol.2023;No.33.

2. Kikuchi A, Naruse A, Nonaka K, Mori M, Tsutsumiuchi K.The Utility and Challenges of Liquid Biopsy.Thermal Medicine.2025;41(4):57–72.doi:10.3191/thermalmed.41.57.

3. Nishida R, Takahashi M, Ide K, Yuki M, Noguchi S, Furusawa Y, Hojo H, Harako S, Horikawa R, Mizuno T, Momoi Y.A machine learning model for cancer screening in dogs using comprehensive circulating microRNA profiles.Journal of Veterinary Internal Medicine.2026;40(1):aalaf071.doi:10.1093/jvimsj/aalaf071.

4. McCleary-Wheeler AL, Fiaux PC, Flesner BK, Ruiz-Perez CA, McLennan LM, Tynan JA, Hicks SC, Rafalko JM, Grosu DS, Chibuk J, O’Kell AL, Cohen TA, Chorny I, Tsui DWY, Kruglyak KM, Flory A.Next-generation sequencing-based liquid biopsy may be used for detection of residual disease and cancer recurrence monitoring in dogs.American Journal of Veterinary Research.2023;85:1–8.doi:10.2460/ajvr.23.07.0163.

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