ネコの糖尿病とSAAの関係

病気の診断や治療の経過を見る際に炎症性マーカーはよく利用されますが、イヌのCRPに比べてネコのSAAはまだあまり利用されていない印象を受けます。糖尿病のような疾患でもSAAの上昇がみられるので、SAAについて理解を深めることで今後の診断や治療の精度が上がります。SAAの理解を深めるとともに考え方などを記していきます。

SAAとは?

SAAとは急性総蛋白の血清アミロイドAのことで、炎症が起きた際にサイトカインの刺激を受け肝臓で作られて血中に放出されます。急性総蛋白は他にも種類がありますが、その中でもSAAは反応が早く、濃度や変動率が大きいことが特徴です。

炎症は発熱が重要な指標になりますが、ネコは興奮によっても体温が上昇してしまいます。しかし、SAAは興奮などで数値が上昇しないため体の状態を正確に把握することができます。イヌでよく用いられるCRPはネコの場合では炎症時にほとんど変動しないことが分かっており使用することができません。

SAAの考え方

SAAは白血球などの数値と比べて早く変動するので、値の変動を見ることで治療方針が正しいのか、改善傾向にあるのかを推測することができます。外科手術後のモニターとして用いることは有用であり、術後24~48時間でピークに達し、通常4~5日ほどで基準範囲内に低下します。術後になかなかSAAが基準範囲内に低下しない場合は術後管理がうまくいっていない可能性があるので精査する必要があります。

SAAの上昇と糖尿病の関係

SAAの上昇しやすい疾患としては、急性膵炎や猫伝染性腹膜炎をはじめ、炎症性疾患以外でも糖尿病ではおよそ38%、甲状腺機能亢進症では50%というように、一部の内分泌疾患でも上昇が認められる場合があります。高齢のネコに多い慢性腎臓病においてもSAA 濃度の高値が報告されています。糖尿病や甲状腺機能亢進症および慢性腎臓病でSAAが上昇する機序はまだわかっていませんが、SAAの上昇はSAAが基準範囲内である場合と比較すると生存期間が短いことから予後を評価するのに役立つと考えられています。

まとめ

イヌでは積極的に測定されている炎症性マーカーですが、ネコではまだまだイヌほど普及していないように思われます。炎症性マーカーは炎症以外の興奮やステロイド使用などの影響を受けにくいことから積極的に測定することで診断精度を上げ、治療管理の指標に役立ちます。予後判定にもつながるので病気を診断したら終わり、ではなく定期的に測定することが重要といえます。

獣医師N

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