動物の糖尿病治療における持続血糖測定器の活用

持続血糖測定器は、センサーを体に装着することにより、そこにリーダーを当てれば採血しなくても血糖値が測定できるというものです。現在最もポピュラーな装置は、一度装着すると2週間使用可能で、その間はいつでも何度でも測定可能です。また、血糖値の動きがグラフで表示されるため、血糖値曲線の作成も非常に簡単になります。今回は持続血糖測定器を使用した感想を紹介します。

糖尿病の治療のためには血糖値の把握が必須

糖尿病の診断や治療のためには血糖値の把握が必須です。特に治療開始時にインスリンの投与量を決めるためには血糖値曲線を作成しますが、そのためには頻回の採血が必要です。また、糖尿病性ケトアシドーシスの治療時にも頻回の採血が必要になります。しかしながら、採血のためには保定が必要であり、そのストレスのために瞬間的に血糖値が上昇すると言われています。特にネコでは1回「シャーッ」と怒るだけで100mg/dL程度血糖値が上昇することもあるのです。

今まで困っていたこと

特に神経質なネコの場合、毎回の採血が大変でした。部屋から出すだけでも非常に怒り、採血のために保定する際にも怒って保定に時間がかかるということもあったのです。そのため、血糖値もどこまで正確に把握できているのか判断が難しいこともありました。また、糖尿病性ケトアシドーシスの場合、夜中に泊まりこんでの治療が必要になります。自分自身が泊まるのはまだしも、採血の保定のために看護師まで夜中に働かせることはできるだけ避けたいものです。

持続血糖測定器の導入

そんなとき、持続血糖測定器の存在を知りました。動物でも使用している例を聞き、早速導入しました。センサーは500円硬貨と同じくらいの大きさですが、500円硬貨よりも軽いつくりになっています。細い針が付いていて、周囲はシールが付いており、脇腹あたりを毛刈りして、そこに装着するのです。装着時にほとんど痛みはありませんし、エリザベスカラーをするか、洋服を着せれば動物がいじることもありません。

測定しているのは皮下組織(間質液)の血糖値(表示される血糖値は推定であることに注意が必要)で、リーダーをセンサーにかざすと、その時の血糖値とそれ以前の8時間の血糖値の変動がリーダーに表示されるという仕組みになっています。

糖尿病管理には手放せない機器に

私の主観ですが、数件にわたって使用した印象としては、非常にストレスフリーで、しかもスタッフの手を借りなくても簡便にだいたいの血糖値の動きを把握できるため、糖尿病管理には手放せない機器になりました。

まとめ

現在は入院中の動物にのみ使用していますが、今後は飼い主さんの希望があればセンサーを装着して退院させ、安定するまでは自宅で血糖値を管理しながらインスリン治療を行なってもらうというケアも可能になりそうです。しかし、表示される血糖値はあくまで参考値である点は留意しておく必要があります。場合によっては、小型の血糖測定器等で正確な血糖値を確認するなど、それぞれの装置の特徴を活かしてうまく使い分け、糖尿病治療に臨みましょう。

獣医師D

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