インスリノーマは、膵β細胞が腫瘍化して過剰にインスリンを分泌することで低血糖を引き起こし、さまざまな症状がみられる疾患です。
フェレットのインスリノーマ治療では、食事管理が非常に重要です。
そこで今回は、フェレットのインスリノーマにおける食事管理の大切さと食事管理の詳細、継続治療において飼い主さまに伝えるべき重要事項についてお伝えします。
フェレットのインスリノーマでは、食事管理が重要
インスリノーマは進行性の疾患であり、完治しないため、生涯にわたる治療が必要です。治療には、食事管理・ステロイドやジアゾキシドの投与といった内科的治療・膵臓結節の外科的摘出があり、インスリノーマをどのように管理していくかが余命に深く関与します。
ただ、外科的摘出に関しては完治が難しい場合が多いといわれています。フェレットのインスリノーマは大きさが数mm以下と比較的小さく、散在性で多発するため、外科的切除を行ったほとんどの症例で腫瘤の取り残しや、転移病巣による再発が半年以内にみられるからです。
とはいえ、再発は多いものの、内科的療法のみの平均生存期間は219日で、膵臓結節の外科的摘出を行った平均生存期間は462日(14~1207日)との報告もあります。そのため、外科的治療は確定診断や内科的治療の補助においては有用と考えられており、食事管理と内科的治療が治療のメインとなるでしょう。
ただし、薬で低血糖にならないようコントロールするにも限界があります。経過とともに効果がみられなくなるため、食事管理がもっとも重要とされています。
食事管理の詳細
食事管理では、良質なタンパク質を多く含む食事を、1日を通してしっかり与える必要があります。寝ている時間の長い高齢のフェレットや、自力で食べられないフェレットには、フェレット用の流動食を4~6時間おきにシリンジを使って給餌してあげてください。特に、グルコースの要求量が増える運動や興奮後、睡眠から目覚めた後には、できる限り給餌を行うことが大切です。
継続治療において飼い主に伝えるべき重要事項
1.フェレットバイトなどの糖類は与えない
血糖値を上げるために、フェレットバイト・コーンシロップ・甘いおやつなどの糖類を与えることは避けるよう伝えてください。血糖値が急激に上昇し、インスリンの過剰分泌を引き起こして、重度の低血糖になる可能性があるので、緊急時以外は与えないよう伝えましょう。
2.緊急時に備えてもらう
痙攣や発作が起こったときには、ブドウ糖やフェレットバイト、ニュートリカルなど糖類が配合されているサプリメントを与えます。なかでも、ニュートリカルは糖類に加えて脂肪が含まれているため、ゆっくりと吸収および代謝され、ブドウ糖やフェレットバイトよりも血糖値を安定したレベルに維持できるといわれています。
痙攣や発作時の与え方としては、唇や歯茎または口の隅に置き、それを舐めたり飲み込んだりする方法が理想的です。噛傷事故を防ぐため、綿棒などを利用するのも良いでしょう。
3.内服を自己判断で減らしたり止めたりしないよう指示する
インスリノーマでは、決められた用量と用法を守って内服をきっちり行うことが欠かせません。飼い主さまに定期的な血液検査を受けさせるよう伝え、自己判断で内服を減らしたり止めたりしないよう指示をしましょう。
まとめ
フェレットのインスリノーマでは、低血糖の状態にしないことが大切です。飼い主さまと継続治療における重要事項をしっかり共有し、フェレットのQOLを上げるよう努めていきましょう。
獣医師F
【参考文献】
塚根 美穂, 塚根 悦子, 副腎疾患の併発を疑った糖尿病のフェレットの1例, 動物臨床医学, 2015, 24 巻, 1 号, p. 23-26, 公開日 2016/03/24