尿検査は、泌尿器疾患ではもちろんのこと、糖尿病やその他のホルモン疾患、溶血性疾患、肝疾患など、全身の異常を把握するためにも行われる大切な検査です。
しかし、血液検査やレントゲン検査などと比べた場合、スクリーニング検査として尿検査が行われる機会は少ないように感じられます。そこで今回は、尿検査の必要性やその方法をもう一度考えてみましょう。
尿検査でわかることとその必要性
尿検査には、尿の性状を調べる尿試験紙検査と、尿に混ざる異常な成分を検出する尿沈渣検査があります。それぞれの検査でわかる異常は、以下の通りです。
表1.尿試験紙検査の項目と異常が出る病気
表2.尿沈渣検査の項目と異常が出る病気
このように、尿検査ではかなりたくさんのことがわかります。尿検査は、尿量の増加や尿の回数の増加、見た目や匂いが変わったなどという主訴の場合にはもちろんのこと、全身状態が悪い場合にも、肝疾患や中毒、急性腎不全などをチェックするために有用となるのです。
尿検査のための採尿法
尿検査を行う場合はもちろん尿が必要ですが、血液検査のように必ず動物病院で採材するわけではありません。尿はお家で取ってきてもらうこともできますし、動物病院で採尿する方法もあります。そのため、それぞれの注意点を確認しておきましょう。
家で尿を採る方法
家で尿を採る方法は、以下の通りです。
・散歩などで尿をした瞬間に、平たい皿を体の下に入れ、尿をキャッチする
・トイレのペットシーツを裏返してビニール側に尿をためる
・砂の上にラップを貼っておく
どの方法にしても、家での採尿では多少なりともゴミや細菌の混入は避けられません。特に、以下の点には注意してもらうよう指導しておきましょう。
表3.自宅採尿での注意点
院内で採取する方法
家で採尿するのに比べ、院内では尿への混入物が少ないため、正確な検査をするためには院内での採尿が望ましいです。また、家での採尿が難しいネコの場合にも、院内で採尿する機会は多くなります。それぞれの採尿法のメリット・デメリットは、以下の通りです。
図1.各採尿方法のメリット・デメリット
検査の目的や動物の性格などを考えて適切な採尿方法を選択することで、手間を最小限に抑えて正確な尿検査を行うことができます。
家でできる尿検査や観察ポイント
排尿は、動物が毎日する行為ですので、飼い主さまがしっかり観察することで、病気や体調の変化に気付いてもらえることがあります。
特に、以下の点に注意して見てもらうよう伝えておきましょう。
表4.ペットの排尿時に注意して観察してもらうこと
また、尿の観察だけでなく、家で定期的に尿検査をしてもらうこともできます。
糖尿病の動物であれば血糖値の変動の目安として尿糖とケトンを、結晶や結石ができやすい動物の場合はpHを測ることで、病気のコントロールが良好なのか悪化しているのかを家で早めに知ることができます。なかなか来院できない患者さんや、頻繁に検査が必要な場合には、家での尿検査を提案してみるのもいいでしょう。
まとめ
尿検査は、泌尿器疾患と糖尿病において、その発見や病気の治療経過を追うために必要不可欠な検査となります。それだけではなく、尿は全身の異常を反映することが多いので、スクリーニング検査としてもとても大切な検査です。
尿検査の意義と方法をしっかり把握して、適切なタイミングと方法で尿検査を行えるようにしておけると良いですね。
獣医師D