イヌの膵炎治療薬として新しい抗炎症薬に注目が集まっています。膵炎は診断も難しいうえに併発疾患の存在や治療でも考えることがたくさんあり、悩むことが多いです。基本的な治療に加えて、新しい抗炎症薬を使用するのも選択肢の1つになりそうです。ここでは一般的な膵炎の治療法を記していきます。
膵炎の基本的な治療法
膵炎は診断が難しく、膵炎の症状は認められないのに膵酵素の数値が高い場合などは治療に悩みます。膵酵素が膵臓以外の疾患や高脂血症で上がっていないかを確認し、もし膵臓以外に問題が見つかればそちらの治療を行います。膵特異的リパーゼが高いのにも関わらず、炎症性マーカー(CRP)の上昇が無く、その他の疾患も考えにくい場合は、慢性膵炎などを疑う必要があります。その場合はストレスをかけたり手術などを行うと急性膵炎を引き起こす場合があるので注意が必要です。
膵炎の場合、基本的な治療としては、膵臓の還流状態改善のために輸液を行うこと、疼痛緩和のため鎮痛剤を使用すること、脱水防止・悪心による食欲不振を防止するため制吐剤の使用が一般的です。
ステロイドおよび抗生剤の効果について
ステロイドの使用に関しては様々な考え方があります。イヌの場合、特に危険因子にはならず、使用した場合にCRPの低下や、死亡率の軽減などが報告されています。一方で、膵炎を罹患していると血栓ができやすく、ステロイドの使用により凝固亢進がおこり、DIC悪化の懸念があります。加えて、糖尿病併発リスクや消化器症状の悪化も引き起こす可能性があるため注意が必要です。
抗生剤に関しては、イヌでは細菌に起因するケースがほとんどないため、効果は期待できません。ネコでは細菌感染による三臓器炎が起こりやすいので抗菌剤の投与を考慮します。
膵炎治療時の食事について
以前は、膵炎の場合は絶食が原則でした。現在ではむしろ絶食は推奨されず、早期からの経腸栄養が良いとされています。少量でもよいので、腸を動かすことが大切です。特にネコでは、絶食が続くと肝リピドーシスを誘発するので注意が必要です。イヌでは食事によって膵炎を誘発・悪化させるため低脂肪食が良いとされています。ネコでは特に低脂肪食にこだわる必要はありません。
まとめ
イヌの急性膵炎に対応した新しい抗炎症薬が今注目を浴びています。しかし、単独使用だけで効果を発揮するわけではないので膵炎の治療についてきちんと理解した上で使用する必要があります。ステロイドは効果がある反面、糖尿病などの併発疾患へのリスクもありますが、新薬はそういったリスクが軽減できるので今後の症例報告に期待が高まりそうです。
獣医師O