膵炎は非特異的な症状が多く、なかなか診断するのが難しい疾患の1つです。膵酵素値が上昇しているからといって膵炎と診断することはできません。膵炎の診断までに行う検査や膵酵素の上昇をどう考えていくかが大切です。
膵酵素の上昇が認められた時に考えること
膵炎を疑った場合、感度・特異性が高いため膵特異的リパーゼとしてイヌのSpec cPL、 ネコのSpec fPLが一般的によく測定されています。しかし、実際には膵炎でなくとも高値を示す場合があります。原因は分かっていませんが、イヌについては日により変動があり、平均すると基準値以下に収まると報告されています。
一方で膵酵素が高いわりに膵炎が疑いにくい場合は、剖検しないと分からないような組織学的な異常が膵臓に存在していることや、食事の影響で高脂血症の場合に高値が出ると考えられています。また、小腸疾患、肝疾患、腎不全、クッシング症候群などでも膵特異的リパーゼ値が上昇するという報告もあります。膵炎では併発疾患も多いため、併発疾患についてもよく考える必要があります。
ネコの場合は健康な個体でも数値が高いことがあるため、診断がさらに難しいとされています。
行うべき検査内容
血液検査では血小板減少が膵炎のイヌの6割近くで認められ、DICに関与するとされています。さらに肝酵素、ビリルビン値、反応性タンパク(CRP)が上昇するケースが多くなっています。
ネコではリンパ球減少および好酸球減少がおよそ7割近く認められるという報告があります。また、斃死してしまったネコでは低血糖が多いとされています。画像検査としてレントゲンではあまり意義がありませんが、超音波エコー検査では急性膵炎は診断できます。慢性膵炎では困難です。
重症度を評価する
膵炎によって他の臓器が障害を受けているかをみることで、重症度が判定できます。肝酵素に3倍以上の上昇、尿素窒素・クレアチニンの上昇、白血球の上昇、血症板数、CRPなどを確認します。治療の反応をみながら経時的に測定することで予後が分かりやすくなります。
まとめ
膵炎の診断はとても悩ましく、症状、血液検査、画像検査の総合的な結果から診断します。中でも膵酵素を頼りに診断することが多くなりますが、膵炎以外の疾患でも数値が上昇することがあるので注意が必要です。また、重症度を判断することで、治療判断や予後判定ができるため、積極的に重症度を経時的に見ていくことは重要です。
獣医師A