この度、日本獣医生命科学大学 獣医内科学研究室第二 宮川優一先生に動物の腎臓病に関する記事を執筆いただきました。
連載形式で、腎臓病に関する様々なお話をお届けします。
慢性腎臓病とは?
慢性腎臓病はネコでは非常に一般的な疾患であり、主要な死因でもあります。不可逆的で進行性であるために、慢性腎臓病はなるべく早期に診断し、その進行を抑制する治療を必要とします。と、多くの教科書で記載されています。
慢性腎臓病とは、どのような疾患なのでしょうか。
昔には、慢性腎不全と記載されていました。しかし、その原因が様々な疾患によって生じているにも関わらず、「慢性腎不全」という曖昧な用語であるがために、正確な疾患の把握、予後の評価、合併症のリスクの予測が困難でありました。
ヒトでは、死因の第2位である脳梗塞、心筋梗塞といった心血管系疾患が腎機能の低下と関連することが報告されました。
慢性腎臓病(CKDと略称される)は、慢性的な腎疾患を一括して明確に定義し、一般の開業医、患者に理解しやすくし、心血管系疾患の発生を予防するためにつけられた疾患名です。
CKDに含まれるのは、腎障害(蛋白尿)または腎機能低下のいずれか、あるいは両方が持続的に存在している腎疾患です。
ヒトのCKDは、その原因(例えば腎盂腎炎、尿細管間質性腎炎など)が進行し、腎不全に進行していく全ての過程を把握し、治療方針、予後の予測を行うために診断されます。
CKDという用語は、疫学的、公衆衛生的な意味合いが強く、治療は個別な原因に合わせて行います。
ただし、すべてのCKDは腎不全に進行するために、腎不全に至った患者では、原因にかかわらず類似した治療を選択することになります(例えば、食事制限、リン吸着剤や血液透析)。
日本獣医生命科学大学 宮川優一
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