イヌの糖尿病は、多飲多尿や体重減少などの典型的な症状がみられることが多いため、検査によって比較的容易に診断がつきます。しかし、糖尿病と診断した時点で終わりということはなく、すぐに基礎疾患や併発疾患の有無を確認する必要があります。
糖尿病の基礎疾患
イヌの糖尿病の基礎疾患として、クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)・膵炎・子宮蓄膿症・発情・卵胞嚢腫・黄体嚢腫が挙げられます。発情後にはインスリン抵抗性を示すため、糖尿病の治療中に発情すると血糖値のコントロールが非常に難しくなります。黄体嚢腫の場合はさらにインスリン抵抗性が長く続きます。
糖尿病の併発疾患
併発疾患としては、白内障・慢性腎不全・膀胱炎や前立腺炎などの尿路感染症・ぶどう膜炎・網膜症・皮膚炎などがあります。また、血糖値をうまくコントロールしても、白内障や網膜症を完全に防ぐのは難しいと言われています。また、高血糖が持続することで感染症が起こりやすい環境となるのでこまめに皮膚の状態や尿の回数・性状を確認する必要があります。また、血糖値がうまくコントロールできない場合は、慢性腎不全が問題になりやすいため注意が必要です。
避妊手術の重要性
発情がくると約1ヵ月近く血糖値のコントロールが難しくなり、黄体嚢腫の場合はさらに長期間難しくなります。そのため、体の状態によりますが、糖尿病を罹患している場合はできるだけ避妊手術をした方が良いでしょう。また、糖尿病を罹患していない場合でも、発情後に一過性の高血糖を示す場合は、将来的に糖尿病に移行することがあるので避妊手術は予防になるともいえます。さらに、そのような雌イヌは妊娠した場合に胎児にも影響するため繁殖には適していません。
まとめ
糖尿病の診断は比較的容易ですが、基礎疾患や併発疾患をきちんと診断することが重要です。基礎疾患がある場合は直ちに治療を開始し、併発疾患に関しても、現在症状が認められなくても将来的に表われる可能性があるため、注意しなければなりません。
また、避妊手術をしていない雌イヌに関しては、すでに糖尿病に罹患している場合、可能なかぎり子宮・卵巣の摘出を行うべきです。糖尿病に罹患していない場合でも発情後に高血糖を示す場合は将来的に糖尿病に移行することもあるので、避妊手術を飼い主にすすめるとともに、母子ともに高血糖が影響するため繁殖には適さないことをインフォームする必要があります。
獣医師T
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